絶たれたふわとろの生活

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絶たれたふわとろの生活

「オニリーヌ!私は君との婚約を破棄する!」  親子丼貴族の御曹司、 令嬢が集う親子丼学園の学祭パーティー会場にそう青年の声が響き渡る。 彼の名前はトリムネ。親子丼の世界をすべる鶏肉族の御曹司で国王となることが約束された 皇太子だった。 対して彼によって突如、婚約が打ち破られたのは玉ねぎ族出身の令嬢オニリーヌだった。 オニリーヌは言葉がまだ受け止められていないのか光の失った目をぱちぱちとさせ、 時が止まったように動けなくなったのち、 震えながら声を絞り出した。 「そんな…嘘でしょう…?王子…なんで!」 「黙れ!貴様は私を含む鶏肉族から 見捨てられたのだ!涙を誘うキツイ成分しか 出せないお前にもう居場所はない!今 すぐ故郷ジーアワの島にでも帰るのだ!」 「酷いっ…王子!貴方は私に永遠の愛を誓うと 約束されたじゃないですか!」 「黙れ黙れ黙れ!そこのササミ達!今すぐ彼女を摘み出せ!」 「いや!やめて!いやぁぁぁあ!」  彼はそばに控えていたトリムネが率いているササミ達が無言で動揺するオニリーヌを連行する。 オニリーヌは涙と怒りと困惑でぐちゃぐちゃになる精神を抑えられず、 叫びながら必死に抵抗する。 すると、最愛のトリムネの横でひとりほくそ笑む卵族の令嬢の存在に気づいた。 それは、オニリーヌの親友であったはずの タマゴーラだった。 彼女はオニリーヌの視線に気づいていないのか、トリムネに少しずつ近づき微笑んでいる。 トリムネはそんなタマゴーラの可憐な笑みにふっ、と氷のような冷たい表情を崩して微笑み返す。 …タマゴーラ!まさか彼女が!私のトリムネ様を!?  そう思ったが最後、オニリーヌはパーティ会場の扉の外に放り投げられ、 目の前で分厚い扉が閉められた。 そして、その数日後オニリーヌの予想は的中しトリムネは新たな妻としてタマゴーラと婚約を結んだのだった。
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