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チャトランこと茶トラの地域猫をなでながら、薄暗くなっていく春の空を見ていた。一番星が控えめに光ってる。
ああ、なんか、久しぶりに一息ついた感じ。しばらくは有休もあるし、のんびりしよう。
「秋良サン!」
男の人にしては、少し高めの澄んだ声に目を向ける。
「あっ、ライ。お帰り~」
「タダいまデス! チャトラン、おなかすいてマスか~?」
わしわしとチャトランの首周りをなでるライに、桜耳をパタパタさせ、わずらわしそうにするチャトラン。
「さっき私が食べさせたよ。今はもういらないんじゃないかな」
「秋良サンは? 食べマスか?」
白髪と白ひげの紳士が目印のフライドチキンの箱。……どうりで良い匂いがするはずだ。
素直に受け取れば、ライから「シャワー浴びたら行きマスね」と言われ、深く考えずにうなずいた。
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濡れた黒髪に、ざっくりと胸もとが開いたニットを着たライは色っぽい。というか、そんな感想をもつ自分にかなりの自己嫌悪。
年増にこんな風に見られてると知ったら、さぞかし気色悪かろうと、冷蔵庫を覗き込む振りをして頭を冷やす。
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