やっぱり君には会えません

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  〈やほー! お久しぶりです、リクです。元気してるー?〉  そのチャットを目にした瞬間、俺の精神は彼方へと飛び立ち、はるか上空から実家の景色を見下ろしていた。  俺の実家は祖父の代に築き上げたという、豪勢な日本家屋だ。  祖父は若かりしころ埼玉で建築会社を立ち上げ、その類まれなる経営力で会社を急成長させた。惜しくも十年前に亡くなってしまったが、家族に莫大な遺産を残してくれた人格者だ。  その遺産のひとつであるだだっ広い実家の、床の間に陳列されている壺を思い出す。壺、壺、壺。壺、かける十二。ひとつだけ飾られているなら雰囲気もあるけれど、ばらばらのデザインの壺が十二個も並べられていたらそれはもう壺屋でしかない。  壺か?  壺なのか?  俺はスマホを握りしめ、返事をしないままリクの次の一手を待った。 〈久しぶりに会いたいなー。高校卒業してから会ってないから、七年ぶりくらいだよね? ヒロト、いま東京だって聞いたよ。俺はまだ埼玉だけど、もうすぐ上京するつもり! なぁ、もし時間があったら会えない?〉  スーツ姿でキメ顔をしているリクのアイコンを見つめながら、俺はごくりと唾を呑んだ。  七年ぶりの突然の連絡。  実家が太い俺を知っての誘い。  具体的な要件を言わない逢瀬の催促。  嫌な予感が、徐々に確信へと変わっていく。とうとう俺にもこの日が来たのだ。最悪、事件に巻き込まれてしまうこの日が。  これは勧誘だ。  霊感商法の詐欺。  リクは俺に、高額な壺を売りつけようとしている……!  
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