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リクは高校一年生のころ同じクラスで、一緒に昼飯を食うメンバーのひとりだった。
といっても特別仲がいいわけではなくて、ふたりきりで遊ぶようなことはなかった。俺にとってのリクは〝親しい仲間のうちのひとり〟くらいのテンションで、高校を卒業すると自然な流れで連絡は取らなくなった。
〝俺、東京で就職して一旗あげたいな〟
当時、リクはよくそんなことを言っていた気がする。
彼はなんとなく野心化の匂いがしていた。
東京という場所に随分と夢を見ているようだった。そのころ俺たちが住んでいたのは群馬寄りの埼玉だったけれど、休日に都内へ遊びにいくのは容易だったのもあり、俺はそこまで東京という場所に憧れを持ってはいなかった。
〝へぇ。リク、いつか地元離れるのか。なんか寂しいな〟
〝ヒロトは実家の会社継ぐんだろ? いいじゃん、俺はそっちのほうが羨ましいよ〟
〝いや、会社は兄貴が継ぐんだって。俺も社員になることはできるかもしれないけど、建築の仕事にあんまり興味ないから〟
〝えー、もったいないな。入社すれば将来安泰だろ?〟
リクは名声やお金に関心があるように見えた。一度だけみんなでうちに遊びにきたときも、「俺も将来こんな家に住むぞぉ」と息巻いていた。
とはいえ高校一年生の俺たちは将来の話をする機会は少なく、やることといえば流行っている動画を見て笑ったり、ゲームをするだけだった。高校を卒業をしてからリクは、今日までどんな生き方をしてきたのだろうか。
チャットを無視したままスマホをソファに放り投げ、作りかけのカレーを火にかけた。
飯を食い、皿を洗い、風呂に入る。寝着に着替え、どうしたらいいのかわからずリビングの真ん中に座り、人生はじめての瞑想なんかをしてみた。
そしてようやくスマホを手に取る。
リクが霊感商法に染まったなんて思いたくはない。
でも心のどこかで、俺はリクを疑っていた。
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