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何よりも、「三十間近の独身女性」が揃いも揃って「恋人や結婚相手」の品定めに来ているという感覚自体が失礼だろう。
彼女たちからすれば、隆則を含めた男性陣は年齢的に少し上で絡みにくかったのかもしれない。とはいえ十も違わないのだが。
隆則にしても、今更相手探しの意図などなかった。
ごく普通に食事と酒を楽しみながら同じテーブルのメンバーと会話する中で、涼音がサラリと告げてきたのだ。
「緒方さん、お子さんがいらっしゃるんですね。私も息子がいるんです。夫はいませんが」
あれこれ詮索される前の予防線として、ではないか。そして何事もなかったかのように食事を続ける彼女。
おそらく「ここまでは構わない」ラインを、自らはっきり提示する涼音に何故か強烈に惹かれた。
どうにか彼女に警戒心を抱かせないよう細心の注意を払って当り障りのない会話を繋ぎ、決死の覚悟で連絡先を交換することに成功した。
周囲が当然のようにスマートフォンを取り出しているのに便乗して、何とか自然に、と祈りながら切り出した隆則に、社交辞令もあったのかもしれないとはいえ応じてくれた彼女に感謝する。
そこからメッセージ交換は続けていたが、初めての逢瀬が叶うまでには軽く半月を要した。
やはりどちらも身軽な独身者ではない。
いや、「独身」ではあるものの、さらに大きな問題があるからだった。
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