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「それにしてもなぜ急にタメ語なんだ」
私は困惑して眉をひそめる。
「しかも、ほぼほぼテメェの普段の話し方に戻ってるじゃねぇか。どうせ、私相手に敬語使うのがだんだんムカついてきただとか、面倒くさくなってきたからだとか。そういう理由でタメ語に変更したんだろ。王子役、テメェが勝手に演じ始めたんだからちゃんと最後まで演じきれよ。……つーか、王子の名前設定は本名のまんまなんだな。で。ツッコミたくないが一応ツッコんでやる。私は『ご苦労なこった』っていう皮肉を言っただけに過ぎねぇから、テメェを下の名前で呼んだことにはならねェんだよ」
「うんうん」
歳桃が真剣ぶった表情でこくこくと頷く。
「君の言いたいことは分かった。よく分かったから(ご)宮龍様って呼んでくれるかい? もちろん、演技なしの屈辱的な顔で」
「予想通り全然分かってねぇじゃねーか。誰が呼ぶかよ。わざわざ、かっことじ、まで言わなきゃいけねぇのが面倒くさいしな」
私が寝不足であることに気づいていながら、ドッキリを用いて今のところ邪魔しかしてない奴のわがままを聞いてやるほど。私はお人好しではない。
「ただ一つ聞かせろ。テメェは自分を様付けで呼ばせた程度で、私に屈辱を味わわせた気になんのか?」
私からの質問に歳桃は薄笑いを浮かべつつかぶりを振った。
「ならないけど、一秒でも早く君の屈辱に歪めた嫌そうな顔を見て心から笑いたい」
「テメェ!」
私は怒鳴ったが、「ねぇ」と歳桃が被せ気味に言ってきやがった。
「あまりにもやる気なさすぎない? 君も僕に合わせて、プリンセスを演じようとする素振りくらい見せたらどうなの?」
歳桃は既に演じる気が失せているようで、王子様がプリンセスに絶対に見せるべきではない不満顔で、自分の腰を折った。
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