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「へえ。自分の愛しのプリンセスをディスりまくる王子様とは、ろくでもない王子様もいたもんだなァ」
私は歳桃に見せつけるために笑った顔をそのままキープする。
歳桃は露骨に顔をしかめた。ワックスで綺麗に整えてあった前髪を自分でぐちゃぐちゃにした後、元の分け目に戻す。
「その勝ち誇ったドヤ顔やめてくれないかな? 調子に乗りすぎ。君は演技してなくていつもの君のままでしょ。今の君はプリンセスではないのだからね? ……それより、君のせいで完全にいつもの僕に戻っちゃったじゃない。ノーミスで完璧に演じきるつもりだったのに最悪っ!」
歳桃はうんざりした表情で文句を言い続ける。
「君に向かって甘々なキラキラした台詞を言うの。気持ち悪くて吐き気しかしなくて大変だったのだけれど、それでも何とか我慢したのに──、」
しばらく止まりそうにないと予想していたが歳桃は突然文句を言うのをやめた。
録画したドラマで一時停止したテレビ画面の向こう側にいる俳優みたいに静止している。
瞬きさえ一切しなくなった。かと思えば、今度は瞬きを繰り返す。
歳桃の異変にさすがに心配になって、
「おい歳桃。どうかしたのか? ……大丈夫か?」
尋ねずにはいられなかった。
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