1.桃の香りを嗅ぎ、梨の皮に目印をつける

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 私はつい先程、また明日、と分かれたばかりの友人全員に、心の底から感謝しながら椅子を机に戻した。  そろそろ行くか。リュックサックを背負って学生鞄を持つとすぐに教室を出る。無論、向かう先は屋上だ。  屋上のドア前に着き、ドアノブを掴んで回そうとしたその時だった。なんか猛烈に嫌な予感がして一旦手を止める。  直後、歳桃宮龍が居る気配を察知した。気のせいではなく確実に、このドアの向こう側に歳桃が居る。  一人の時間を歳桃にドッキリを仕掛けられて邪魔されるという最低最悪な未来もはっきりと見えた。  だが、それがどうしたってんだ。相手にしなければいい話だ。歳桃の言動も存在も一切気にせずに夕寝することができれば、私の勝ちだ。  今日という今日は歳桃を絶対ェ負かす。私は意気込んでドアノブをためらうことなく最後まで回した。
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