1.桃の香りを嗅ぎ、梨の皮に目印をつける

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 もし、歳桃が貸し切り状態をキープすることを目的としているなら、屋上につながる階段下辺りで自分の友人に見張らせてる可能性が高い。  後から屋上を利用しようとやってきた生徒らを屋上に立ち入ることがないように、疑いそうにないうまい理由で納得させて追い払っているはずだ。  門番という損な役回りをさせられているだろう友人に対して同情を禁じ得ない。  そういえば、無視しやがったので、これ以上ナメられないためにも文句を言っとくか。私はそう決めて口を開いた。 「おい歳桃。テメェ。無視してんじゃねえ」  不機嫌な声こそ出したものの、声ほど怒っているわけではない。比較的温和な性格であるこの私が無視されただけで怒るわけがない。  私がテメェ呼びをするのは、敵認定してその後も敵だと認識している相手だけ。つまり殴り合いの喧嘩を卒業している今は、歳桃に対してだけだ。  中一の途中まではお前呼びをしていた。だが。
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