給水塔

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 解体工事中の給水塔から、白骨化した死体が発見された。  地方版の一隅を埋めたにすぎなかったその新聞記事のことが、どうしても頭を離れない。  その死体は、一体誰のものだったのか。どのような大きさだったのか。男性か、女性か。大人か、子どもか。  もしも女性で、子どもだったら。  もしもその死体が、風野璃花子のものであったとしたら。  風野璃花子を殺したのは、私かもしれない。  その給水塔は、「三角公園」の中にあった。厳密に言うと、その給水塔があるせいでその公園は三角になってしまったのだった。「三角公園」の周囲は四方を五階建ての団地が取り囲んでおり、給水塔はそれらの団地より頭ひとつ分くらい高かった。そのせいもあり、給水塔はこの町のひとつの目印となっていた。例えば「彼の住む家は、給水塔から見て南にまっすぐ行ったところにある」といった具合である。  私たちはその頃、小学校三、四年生だったように思う。なわとびやドッジボール、外遊びを知り尽くして飽き飽きしていた頃だった。
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