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「この本を読み終わってもまた気持ちから逃げてしまうなら、君にはもう会えないって思ってた。まさか感想を聞く前に、私は死んじゃうなんて思わなかったけど」
「……あの日、もし会えていたら、僕はきっと君を失望させてた」
「そう。でも、今日の君はすごく格好いいよ」
この愛おしくて綺麗な人が、いま手を握っているこの人が、本当はこの世にいないなんて信じられなかった。
「会いに来てくれてありがとう。私はやっと物語を終えられるよ。一葉くんは、この先もたくさん面白い物語を見つけてね」
そう言う彼女の下で、マグカップから昇る湯気がもうわずかであることに気づく。
ぎゅうと、手を握る。
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