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開いた扉に揺られて、ドアベルの軽やかな音が鳴る。オレンジ色の照明だけが灯された、昼下がりの店内は薄暗い。大きなガラス窓の傍の席だけが、陽が差してスポットライトを浴びているようだ。
こじんまりとした店内に散らばるように、3人ほどの先客がいる。それぞれコーヒーをお供に、新聞を読んだり、目を閉じて物思いにふけったりしているようだ。なんだか自分だけが邪な目的でここを訪れたように思えて、後ろめたさが湧いてくる。
「――おや、いらっしゃいませ。はじめまして」
突然、低くてまあるい声がした。入店時にはカウンターの下へしゃがんで作業していたようで、ひょっこりと、愛嬌のある丸顔が現れる。キャンバス地の茶色いエプロンと黒縁の四角い眼鏡がよく似合う、ふっくらとして背の低いその人はきっと店主だ。自分よりもふた回りほど年配の優しそうな人物ににっこりと歓迎してもらえて、知らずに強張っていた肩の力が抜けていく。
店主は手を拭きながら僕の顔を見つめて、小さく頷いた。
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