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「お待たせいたしました」
店主の声にはっとして目を開ける。柔らかい陽の中で、現実感をうしなう机の上。そこに、店のロゴが入った紙製の丸いコースターとアイスコーヒーが置かれる。そして僕の向かいの無人の席に、湯気の立つマグカップも。店主へお礼を言おうとしたけど、言葉は喉につかえて出てこなかった。こうして2人分の飲み物が置かれたテーブルに着くのは、もう10年ぶりのことだったから。
「ごゆっくりどうぞ。
――この席にかかる魔法は、氷が解けるまでの間だけ、湯気が立っている間だけなのだそうです。どうか逢えますように」
店主はそう言って、背を向けた。
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