喫茶aveで、会いましょう

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 陽光が窓枠に切り取られて斜めに降り注ぎ、時折浮かんでいる埃と、グラスの結露がきらきらと光る。空席に置かれたカフェオレから白い湯気がおどる。遠い場所で小さくジャズがかかり、大切に使い込まれて飴色になった机や椅子がそれを静かに聴いている。先客たちが捲る、乾いた頁の音。  ふわふわとして、ゆったりとした時間が流れる此処は、まるで穏やかな白昼夢のようだった。世界からころりと、この店だけが隔離されて転がっているような感覚。    夢の中のように覚束ない手元で、鞄の中から10年間ずっと大切にしまっておいた文庫本を取り出す。深緑の装丁。小さく震える手でそれを持って、落ち着こうとすればするほどに震える息をこぼした。目を閉じた後、机の真ん中に置く。陽の光の中で、表紙に描かれた白い花が呼吸して膨らんだように見えた。  こんな、震えるくらいに馬鹿みたいな期待をして。もし君が見ていたら笑うだろう。でも、こんな噂にも縋りたくなるくらい、僕は――  そろそろと、伸ばした手を本からひっこめようとしたとき。  視界から消える僕の手と反対に、ゆるりと現れた、白くて細い腕があった。
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