名誉挽回を狙って!?

1/1
前へ
/183ページ
次へ

名誉挽回を狙って!?

 悪い例ばかりだと、谷山がかわいそうなので、良い昔話をもうひとつお話しすることによって、名誉挽回を狙うというか、帳尻を合わせておこうと思います。  オートレース場(元SMAP・森且行氏の転職先です)で、アルバイトをしていたときのお話です。  新年レースのとき、谷山はちょうど、場内放送の担当になったのですが、残念なことに、開催初日、レース中の事故により選手がお亡くなりになりました……。  レースは中止されることなく、翌日以降もそのまま続行されました。公営競技とは、まあそういうものだと、理屈の上ではわかっていましたが、選手が亡くなっても、淡々とレースが進められていく現場の雰囲気に違和感を覚えないわけではありませんでした。  翌朝、重い気持ちのまま、レース場に入りましたが、昨日のことなど誰も気にしてないというような空気に、さらに戸惑いを覚えながらも、アナウンスの準備を始めました。  2日目も前半6レースまでのアナウンス担当だったので、来場したお客様向けに「朝のごあいさつ」をするのですが、その「ごあいさつ文」を準備する段になったとき、あることに気づいたのです。  この開催は新年レースだったので、本来ならば初日同様「お正月バージョン」の「ごあいさつ文」を読み上げるのですが、初日に殉職事故が起こってしまった状況において、「新年あけましておめでとうございます」という文言が入った文章はふさわしくないと、すぐに気づきました。  そして、そのとき、ふと思ったんです。  たぶん、上司も職員も自分以外のアルバイト放送員も、誰もこの状況に気づいていないんだろうな、と。  細かいようでいて、決して細かくはない。その一文があるかないかで、場の空気を一変しかねない、そんなデリケートな問題に気づくことができたのは、強迫気質がよい方面に発揮されたからなんだと思っています。  もしも、放送担当がAIだったなら、こういった場面において、どのように対応するのでしょうか? 気になるところです。
/183ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加