しんこん

1/1
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ

しんこん

 「おはようございます、彼方くん。起きて下さい。もう、朝ですよ…」  彼の優しい声に包まれながら、とても幸せな気分で目が覚めました…。って、そうそう。まずは、ご挨拶からなんでしたね。  みなさん、おはようございます。伊勢嶋彼方、11歳既婚です。ふぁーあ。朝から、眠くて仕方ありません…。何せ、昨晩はとっても激しかった(※マ○オカートの対戦が)ですから。ちなみに新婚旅行の熱海での初夜でも、それはそれは激しい(※七並べとか大富豪の対戦が)ものでしたよ。二人ではゲームが成立しないので、旅館の仲居さんと料理長さんにも参加してもらったんでしたっけ。  閑話休題。今ぼくを優しく起こしてくれたダーリンは、このたび配偶者となりました伊勢嶋嵐さんです。いかにも荒々しい名前に反して、とってももの静かで優しい人ですよ。お父様(ぼくにとっての、舅ですね)が花に関係したお名前のため、「花に嵐」の例えにちなんで命名されたとか。風流ですねぇ。  群馬県は、高崎市のご出身。ご実家は、そこいらで知らぬ者がいない個人病院ですよ。結婚前にご実家と病院の方に挨拶に伺いましたが、まぁどちらも広いのなんのって。一介の中流家庭で生まれた、ぼくなんかか釣り合うものかと不安になりましたが…。本人もそのご家族も、あんまり家柄とかには興味がないんだそうで。お金持ち特有の、いい意味で鷹揚な人たちでしたねぇ…。  ちなみに主人は次男坊なので、病院を継ぐ必要がなくて気楽だって言ってました。だから大学も、医大でなくて普通の私学です。卒業後は、そのまま東京に残ってサラリーマンやってます。そこでぼくと知り合って、今に至る次第ですね。  今の住居は、同じく東京都港区のマンションです。ぼくの方の実家から、スープが冷めないくらいの距離にありますよ。タワマンって程ではないですが、若い二人にとっては贅沢すぎる好立地の物件です。しかも、ゴージャスですよ。玄関には滝も流れているし、コンシェルジュさんがいつも控えてらっしゃいます。外出する度に、ご挨拶するのがいささか気まずいですけど。  ここは、夫の実家である伊勢嶋家が所有しているマンションの一室なんです。そのため、破格の家賃で住まわせてもらってるんですよね。お陰様で、夫も満員電車に煩わされる事なくものの数分で通勤出来る次第ですね。  え?ぼくの方は、急いで学校に行かなくても大丈夫なのかって?ふふふ。どうぞ、ご安心を。零和も数十年を迎えたこの御時世、登校するかどうかは生徒の自由裁量に委ねられているのです。何せ、オンライン通話その他で授業に参加する手段は山のようにありますからね。  ひと昔前までは、いじめ等で登校の難しい生徒にしか認められなかったと聞きますが…。これこそが、学校教育の本来あるべき形と言いましょうか。文字通りの、フリースクールと言うやつですね。それでは、無事に夫も会社に送り出した事ですし…(行ってらっしゃいのキスを、忘れませんでしたよ)。ここから行うべき事と言えば、たった一つ。  オンライン授業が始まるまでの間、ちょっと寝室で二度寝してきましょうかね…。これこそが、主婦の醍醐味と言うやつですよ。なぁに。急がなくても、学校は逃げたりしませんって。慌てない、慌てない。一休み、一休み…。  言い忘れてましたがぼく、三秒数えたら寝る事が出来る特技があるんですよ。通学していた頃は、友人たちから野○のび太の再来と呼ばれていました。それでは皆様、少しの間だけ失礼致しますね。  1、2、3…グゥ。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!