野々海 優里 視点

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野々海 優里 視点

「ううっ、目がゴロゴロするぅ」  はぁぁと溜息をつき、パソコンのキーボードを叩く手を止め、目をつむる。  ああっ! もう! 朝からコンタクトの調子が悪いんだからっ! 「昨日、夜更かししたんでしょ?」  隣の席で書類とにらめっこをしていた同僚の安田(やすだ)里佳子(りかこ)の呆れた声が聞こえた。 「うん…………」 「最近、ハードの人も珍しいよ? ソフトにしちゃえば?」 「うーん、なんかね。ソフトはサイズが大きくて苦手なのよ。ああ、我慢できない。外してくるっ」  ガタンと立ち上がり、足早にトイレに駆け込んだ。幸いにもトイレには誰もいない。助かったと鏡を覗き、落とさないようコンタクトを丁寧に外した。痛みから解放されてホッとした私は、はぁぁと息を思いっきり吐いた。  痛かったぁぁ。ありゃ? 眼鏡忘れた? んー、ま、いっか。ぼんやりでも見えるしね。  席に戻ると里佳子がお弁当を広げ、私に手を振る。 「お昼だよーー」  私は手首を顔近くまで上げ、腕時計の数字を読んだ。 「もうそんな時間かぁ。カフェテリアに行ってくる。席なくなっちゃうし!」 「えっ!? 大丈夫? コンタクト外したんでしょ?」 「大丈夫! そこまで目が悪い訳じゃないし、ぼんやりだけど何となくはわかるしさ! じゃ、いってきまーす」  とにかく、混雑する前にカフェテリアの席を確保したかった私は、里佳子に手を振りながら、急ぎ足でオフィスを出た。  長蛇の列ができる前に大好きなサンドイッチBセットを購入し、カフェテリア内を見渡してみる。ぼんやりとしか見えないが、空いている席が見当たらない。  困ったな……と思ったところにふと目に入ったライトグレーのスーツの男性。窓際の席で読書をしているように見えた。  先輩だっ!  ライトグレーのスーツを着ている事が多く、いつも昼休みに本を読んでる3つ上の先輩。私が異動してから会う機会がなかったけど、丁度いいや相席させてもらおっ。
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