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昨日の図書館での出来事を最後に、カインの姿が消えた
また実験に明け暮れているのではないかと、教師も生徒連中も気にする素振りは一切ない
アイツの顔色や体調を崩している様は明らかだったはずなのだが、誰もが気にも止めていなかったのだ…
昨日見た時は、まだ大丈夫そうだった…
本当にそうか?
今、アイツが犯されている病が、それだけのモノか?
花を吐けば吐くほど、命が削られる病
手元にあるガラスの箱は8つ
これだけなら、まだ時間にも余裕があるはずだ…
本当にそうなのか?
何か見落としていないか?
日に日に顔色も魔力も衰えていくアイツを見ていて、本当に大丈夫なのか?
何故かずっと悪い予感がしていた
花は、これだけではないんじゃないか?
アレン達から離れ、ひとり静かに寮に戻る
自分の部屋とは正反対の場所に位置する、普段立ち入る事のない部屋
寮の部屋には格があり、貴族や金持ちがいる部屋と小貴族の部屋では質が異なる
特待生として受け入れられていても、所詮は庶民なこともあり、その部屋は寮の中でも一番便利の悪い位置に置かれていた
食堂や玄関からも一番遠い部屋
庶民は圧倒的に数も少なく、現在使用しているのもその一室だけだろう
滅多に使われる事のない西棟にアイツの部屋はポツリとあった
コンコンコン
軽いノック音の後、返事もない様子に冷たいモノが背を流れる感覚に身震いする
深く深呼吸をするも、ドクンドクンとうるさく鳴り響く心臓の音を抑えることができない
重く冷たい扉を引くように開ける
質素な部屋の中は、濃厚な薔薇の花の芳醇な香りが立ち込めていた
「……カイン…」
青い薔薇の中で倒れた彼を見付けた瞬間、自分の呼吸が止まったような衝撃を受けた
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