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「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ……はぁ…吐くのも、慣れてきたな…」
口を抑えていた手の中には鮮やかな青い薔薇の花
自分の部屋には、数えきれない程の薔薇が散らばっていた
「はぁ…どれだけ、出てくんだろ…」
諦めきれない想いが花になり、何かと一緒に花になって溢れ出す
日を追う毎に体が動かなくなってくる
食事も喉が通らず、無理矢理食べては吐き出す
体が重く、ずっと風邪を引いているような、熱いのに寒気がする
体調が悪いのがバレたくなかった
心配なんてしてくれる人なんて居ないだろうけど…
アイツに勘付かれるわけにはいかないし…
バレてしまわないように、授業には必ず出席した
元々友人と言える奴なんて1人も居ない
喋りかけて来るのなんて、アイツしか居なかったから
体調を崩しているのも、アイツに直接会わなきゃバレないと思っていた
座っていることすら辛く、少しでも楽な体勢を取りたくて横になる
「けほっ、けほっ…」
舌に絡み付いた青い花弁を指で摘んで取り、短い詠唱を唱えて焼き消す
小さな煙と共に焼けて消える花弁を見て苦笑が洩れる
「ヤバいなぁ…授業、出ないと…」
なんとか身体を起こそうとするも、腕に力が入らず頭がクラクラする
今までで一番身体に力が入らない
遠くで扉を鳴らすノック音が聞こえた気がするが、こんな西の端にある自分の部屋に来る奇特な奴は居ないだろうと、聞こえたはずの音を無視した
頭が痛い
常にくる吐き気と、倦怠感
指先が氷のように冷たくなっていくのがわかる
死ぬ時って、どんな風になるんだろう…
そこら辺の記述は見当たらなかったな…
病状を観察していたのをまとめとけばよかった…
オレが死んだら、親父もお袋も悲しむかな?
せっかくこの学園に入れたのに…
やっと、やりたいことも見つけたのに…
これで、弟たちにも学校行かせてやれるのに…
もっと、アイツと仲良くしとけばよかった…
もっと、素直になればよかった…
もっと、一緒に居たかった…
働かない頭でそんなどうでもいい事を考えていると、勝手に扉を開けられる
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