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王立魔法学園
全寮制のこの学園に入学出来ることは、魔法を扱う者にとって最初の難関にして最高の名誉である
そんな名誉ある学園の次期会長候補と言われている青年が2人
珍しい黒髪を持つ一族のローゼン家
その中でも天才の名を欲しいままにしてきた青年
もう1人は庶民の出だが、絶え間ぬ努力と才能で特待生として入学を許された白金髪の青年
学園では、次にどちらが次期会長になるのかの賭けがこっそり行われている程、今一番注目のある2人だった
鍵がしてあったはずのロッカーの中に置かれた見覚えのない物
掌に収まるくらいの小さなガラスの箱に閉じ込められた、鮮やかな青が美しい薔薇
直接手が花に触れられないよう魔法で閉じられているのか、継ぎ目は見つからず、開けることも出来ない
「本当に存在しているのか?」
秘薬の材料として、幻と言われている花
それが今、何故か自分のロッカーの中に置かれている
一体誰が…
そんな疑問もこの美しい花を見ているとどうでもよくなる
誰にも知られないよう布を被せ、何事もなかったかのようにロッカーの扉を閉める
見付かれば、貴族がこぞって大金を持って押し掛けて来るだろう
それだけの価値がある素材でもある
「セオドラ、どうかした?」
少し離れた所にいたアレンが不思議そうに声を掛けてきた
「いや、次の授業でアレンが当てられるなぁ…って思っていただけだ
あの教授は厳しいから早めに向かおう」
「げっ!?マジ?セ、セオドラ様!お助けください!!」
友人の悲壮な顔を見て呆れたように笑い
「実力を伴わない奴は此処に居る意味がないだろ。大人しく怒られることだな」
アレンの哀願を適当に流し、教室へ向かう
長い廊下の端に見覚えのある白金の髪を高い位置で縛っており、それがユラユラ尻尾の様に揺れているのが見える
ついニヤッと不敵な笑みを浮かべ、揶揄うようにその尻尾に指を絡ませる
「カイン、庶民は髪の手入れもまともに出来ないのか?」
光の透ける綺麗な髪をポニーテールにしているカイン
本人曰く、伸ばしたくて伸ばしているわけではなく、切るのが面倒な結果らしい
揺れる髪を指に絡め、サラサラとすり抜ける感覚が気持ちいい
「触んな」
髪を触られたことが嫌だったのか、髪に触れていた手をバチンッと払い退け、殺気を隠さずに金を帯びた緑の瞳を吊り上げながら睨み付けてくる
まるで子猫が威嚇しているようで、怖くもなんともない
「オレ用のオイルを分けてやろうか?お前のその傷んだ髪も綺麗になるだろ」
どれだけ手を振り払われても気にせずにその髪に指を絡ませる
そこまで傷んでいるわけではないが、手入れをすればもっと綺麗な艶のある髪になるだろうと思ってしまう
「要らない。髪なんて触媒以外になんにも役に立たないだろ。それに、お前から貰う義理なんてねぇーよ」
誰にも近寄るなというオーラを隠しもせず、ひとりで行く様子に笑みが溢れる
「セオドア、本当にカインが嫌いだね。まぁ、同感だけど。庶民のクセに此処に入れるだけの実力は認めるけど、あの態度のデカさはどうにかならないのかな?」
別に嫌っている訳ではないのだが、周りからもカイン自身からもそう思われているんだと思う
本当の気持ちなど誰にも知られなくていい
「アレン、行くぞ」
友人の話しを放置し、先程去っていたカインを追うように、次の教室へと向かった
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