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今日も図書館に篭り、ひとりで隠れるように自習する
普段から利用者の少ない此処はオレのお気に入りの場所の一つだ
カインもよく来ているはずだが、最近は姿を見ない…
日に日に体調を崩しているのか、明らかに顔色が悪く、魔法のキレも悪い
オレが心配してやっても、手負いのネコのように威嚇してくる様子を思い出して溜息が漏れる
予習の為に開かれたノートと教科書は、まだ今日は何も手を付けられておらず、ずっとカインのことだけが頭の中を巡っていた
「はぁ…、時間の無駄だな…」
教科書を閉じ、軽く伸びをして休憩がてら本棚を眺めるように歩き回る
こうして席を外していると、最近は1匹のネコが花を運んで来ることが多い
席から姿が見えないように本棚の隙に隠れ、辺りを伺う
少しすると誰も居なかった場所に不意に人影が現れる
黒いローブを頭から外し、見慣れた白金色の尻尾が夕陽に照らされながら揺れているのが見える
子どもがかくれんぼの時によく使う透明ローブ
音や匂いが消えるわけではないし、ちょっとしたことでバレてしまうことから、子どもの玩具として普及されている
小柄なアイツだからこそ、あれでも隠れられるんだな…
辺りを伺うようにキョロキョロと見渡し、人が居ないのを確認している姿につい笑みが溢れる
本当のネコのような仕草に、驚かせてやろうかと悪戯心が芽生えるも、ローブから小さなガラスの箱を取り出す姿を見て思い直す
大切そうに、何かを込めるように、ギュッと小さな箱を胸に抱き締める姿を愛おし気に見つめる
声を掛けようとしたが、オレのノートの側にそれを置く顔はどこか泣き出しそうな顔で…
「…………」
小さくて何を言っているのかわからないが、なにかを囁いた後、またローブを被って姿を消した
バタバタと走り去る足音だけが聞こえ、館内から出て行ったのを確認してから、ゆっくりとした歩調で席に戻る
ノートの横に置かれたガラスの箱
他人の目に入らないように、そっとハンカチを被せる
「はぁ…、体調悪いんじゃねぇーのかよ…」
額に手を添え、溜息が漏れる
「何か言いたいことがあるなら、いつもみたいに直接言ってこいよ」
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