Birthday(R-18)

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Birthday(R-18)

 住宅街から外れたその場所は、所謂秘湯と呼ばれていた。  観光客で予約が埋まる前を見計らって、僕たち2人はそこを訪れることにした。2人だけの時間を過ごすため、まこが調べて遠く離れた隣県に見つけた温泉宿の片隅だ。  大きな宿に併設されているのは平屋造りの建物で、渡り廊下を渡った先にゆっくりと過ごせる広さの部屋があった。個室の露天風呂に客間、ユニットではない綺麗なトイレも設置されていて、有名人が「お忍び」で来るような場所だった。限定一組しか泊まれない、競争率の高い客室らしい。部屋に入るなり荷物を置いて、大きな窓の向こうにある露天風呂を眺めた。 「ここ…高くなかった…?」 「気にすんなよ。ゆうの誕生日なんだから」  露天風呂のヘリに腰掛けて、爪先から膝にかけて浸かる足湯を2人で楽しみながら、しばし身体を癒す。疲労回復の効果があるからと、度重なる出張や会合で疲れている僕にはもってこいの場所だった。おおきく伸びをして、口を噤んだ。隣には誠人しかいなくて、何かを気にする必要もなかった。 「……」 「……」  湯脇口から流れる音と、庭園に植えてある松や桜の木々が擦れ葉が鳴る音がした。鳥の囀り、風のさざめき、どれをとっても心地がいい。あの日から慌ただしい日々が続いているけれど、それと同時にふたりのやりたいことも少しずつ増えていった。  この温泉宿に来ることもそのひとつだ。 「なぁ、深友」 「ん?」  まこがふいに声をかけてきて、こちらを見た。  彼の唇が僕の唇と重なる。一瞬何が起きたのかわからなくて、頭の中が真っ白になった。さっき散々唇を重ねたのに、更に求められるのは珍しい。その間も誠人は僕の唇を舌先で割り込んで、ちろ、と唇の裏側を舐める。 「んっ、誠人っ…!!」 「ごめん…暫く我慢してたから歯止めが効かなくて…」 「そ、その…さっき、いっぱいしたのに…?」 「まだだ。まだ、足りない」  じ、と見つめる双眸は、僕だけを見ていた。確かに今日まで、互いに仕事を忙しくこなしていたので暫くこのような触れ合いはなかった。  普段から手を握ったりはするし、隣合わせのベッドで寝て気付いたらまこに抱かれながら起きている。それでも僕が出張や研修へ行く為、しばらく自宅を離れていると寂しい思いをさせているのはなんとなく分かっていた。忙しさに翻弄されて、すれ違うこともしばしばあった。 「深友とこうしてのんびり話すのも、久しぶりな気がする」 「…、ごめん、誠人」 「謝んなよ。だけど、たまに…おまえが遠くに行って、このまま帰って来なかったら、って思うと…その、不安で」  ちゃぷ、と足が湯の中で跳ね、飛沫が辺りに撒き散らされる。人は脆く、いつその命が燃え尽きるのかなど決して分からない。俺の父が闘病の末亡くなったように、あっけなく逝ってしまうことだってある。その為か、ゆうと共に過ごす時間が随分貴重になってしまったように思った。  それでも添い遂げると決意したからには、自分の我儘で恋人を困らせたくは無い。互いに高校生ではなく、既にいい歳した大人だ。だからこそ、俺は深友の腰に手を回した。深友は綻ぶような笑みを浮かべ、照れながら俺の頭に自分の頭をこつんと当てた。 「少なくとも僕から離れることはないから…心配するなよ」 「今日の夜は寝かせないからな」 「…んも…さっき僕が言った台詞だろ」  こく、と恥ずかしそうに頷いて、深友が俺の頭に手を伸ばしてきて、少しばかり硬い質感の髪をざらりと撫でた。 ×   ×   ×  足湯を愉しんだ後、湯けむりに隠れて見えないよう、服を脱いで裸体を手で隠しながら湯船に足を運ぶ。服は濡れない入口近くに置き、上がったあとの準備もなおざりにして、かけ湯をしたあと湯船に再び爪先をつけていた。広めな檜造りの露天風呂からは綺麗な庭園が見え、爽やかな木の香りと花びらが宙を漂い、五感すべてで癒してくれる。先程足先で感じたサラサラとした湯は肌触りが良く、しゃがんで腰まで浸かる。片手で首に湯を掛け、肌に落ちると玉になって湯船に帰っていった。まだ若い証拠らしい。 「んあ"~~~っ!」  肩まで浸かり低く唸れば、背後から笑う声が聞こえた。驚いて水面を叩くと波紋が幾つも重なって、僕は急いで浴槽の隅に寄り、背中を彼に向けたまま悶絶した。振り返ったら腰にタオルを巻いただけの彼が、すぐ近くまで来ていたなんて思わなかったから。 「ははっ!今の声、かなりオッサンだったぞ」 「そんなことない!まだ水が玉になって弾くから!それにいきなり入るなよ…ビビっただろ…」 「何言ってんだ、今に始まったことじゃねーだろ」  何時でも余裕のある彼が羨ましい。僕はプリプリとふくれっ面を作りながら、それでも心の中から嬉しさを滲ませないように努めた。暫くぶりの温泉も、まこと過ごす時間もはしゃぎ過ぎて疲れては元も子も無い。そんな僕の心中を知ってか知らずか、まこが水音を立てることなく湯船に浸り、いつの間にか僕の背後に座っている。 「いくら、その、恋人同士でも…明るいとこで見られるのは恥ずかしいもんなんだよ!」 「へぇ…初めて聞いた」 「!」  まこの目が怪しく光ったような気がした。 ×   ×   ×  俺がゆうの耳元にぴったりと唇をつけ、浴室でも通ると言われる声で囁き掛ける。ゆうは火照る顔を更に赤くして、両手で顔を覆った。白い筈の耳の先まで赤くなっている。その手をやんわりと下ろさせて、深友の背中に接近した。  そう言われれば確かに、明るい場所で彼の裸を見ることは今まであまりなかった。 「なぁ、今更だろ。…もう慣れちまえよ」 「そんなの、無理にっ…決まってる…」  深友の声から威勢が抜けて、代わりに呼吸が荒くなってくるのが分かる。彼の身体を背中から抱きすくめ、指先で柔らかい胸元を揉んだ。緩急をつけて指を動かし、深友の胸の尖端を執拗にこねくり回せば、力が抜けていくのは前から知っている。は、と熱い息を吐き出して、俺に背中を預ける身体を支えた。 「おまえ、どれだけ我慢してた?」 「っ…!」 「少し触っただけなのに…ここ、すごく固くなってる」  学生の頃、深友の身体は少しワケアリで、男の証が極端に小さかった。代わりに胸がそれなりに大きく、浴衣の着付けで少し大変だったことがある。今では手術や治療の甲斐あってか、男のソレはかなり大きくなった。それでも乳首が性感帯なのは変わりなく、更に筋肉がついて胸は大きくなっていた。指先の動きを少しばかり強くして、突き出た乳首から腹、腹から腰と撫でていくと、深友は子猫みたいな声で俺の名前を呼んだ。片手で深友の尻をなぞり、足の間からそれを前後に擦る。そして温泉の湯ではない滑りが指先にまとわりついて来ると、薄皮に包まれたソレに塗り込むように弾き、摘み、指に挟んでよじる。 「やっ、はぁ…っ…まこ…、…」 「ふふ…もう我慢できないなんて、スケベだなぁ」  深友が恥ずかしそうに身をよじり、俺の耳元でそっと囁いた。 「……それは君もだろ」 ×   ×   ×  誠人が喉奥で笑いながら深友を抱き起こし、立ち上がらせて浴槽の縁に手を掛けさせると、自分は彼の背中にぴったりくっついたまま寄り添った。暫く深友に触れられなかった誠人の滾りは既に臍の近くまで反り返り、荒い息を吐いて深友の腰に掛けた手に力を入れる。 「…なぁ、いいか?」 「僕がやだ、って言わないことは知ってるだろ」 「無理やりするのは嫌だから。その…おまえにはうんと気持ちよくなって欲しいんだよ…」 「…いつもそうだから大丈夫なんだけど……」  恥ずかしそうに俯く深友の腰を引き寄せ、間髪入れずに誠人の身体が揺れる。 「んあっ…!」 「っ、痛くないか?」 「あっ…大丈夫…その、久しぶりで…意識飛びそうだった…」 「うん…俺ももうヤバい」  卑猥な音を立てながら徐々に後孔の中へ侵入し、深友の体内に入り込む。きつく締まった肉壁に包まれながら誠人の全てが入った頃には、深友の顔は涙と涎で濡れていた。 「んっ…あ…当たってる…、ぁあ…」 「これ、?」  水音が大きくなり、誠人の腰が動き出す。徐々に動きが速くなり、中の締まりが解け少しずつ深友を追い詰めていく。次第に快感が増してきて、深友の手が浴槽の縁を強く握り、爪痕を残しそうになった。 「まこ、はや、はやいって、あぁぁっ…!」  深友の中を掻き回しながら何度も突き立て、ぱちゅぱちゅと肉を打つ音を漏らし蹂躙する。深友の嬌声が大きくなると誠人の額に浮かぶ汗が雫となって、深友の背中に落ちていく。 「やっ、はげし…」 「くっ…深友の中が離してくれないから」 「おく、おく、そこっ…あぁっ、だめ…」 「ここ、っ、おまえの気持ちイイとこなんだよな…」 「っ!」  一度腰を引き、入口まで戻った誠人の先端が深友のしこりをえぐるように突けば、一際大きい声の後、湿った音と同時に深友の背中がびくんと痙攣して腰がしなる。何度も打ち付けられ、一瞬誠人が体内から離れると雄から流れ出ている露が白く濁り、誠人の手の平の中で漏らすように射精した。 「深友、気持ちいい?」 「まこ、声、出るから…う…その…すごい、良くて…」 「大丈夫だろ、誰も近くに居ないんだから…っ、…締め付けんなって」 「だって、…おかしくなりそうで…んっ…」 「っ、あぁ、駄目だ、出る…!」  一際大きく貫くと深友の中で誠人が弾け、勢いよく精を放った。彼が深友の腹の上を撫で、一体化している辺りを軽く押す。 「ここ、分かるか…?俺がいるとこ」 「…!んっ…僕の中に…いる…」 「そうだ。良く言えたな?」 「ほんとに、その…またイキそうだから…そんな強く押すなって…!」 「なんでだよ、おまえ此処をごりごりされるのが大好きだろ?ご褒美だって」  中で強く擦れ合い、ふたり同時に更に頂へ昇っていく。深友の反りあがった雄からは、白いものが混じった体液がとめどなく流れている。 「や、ん、おかしくなるっ…!まこ、誠人、たすけて、無理…あぁっ…!」 「何も怖くないって。深友の中、混ざりあってぐちゃぐちゃなのに…まだ俺を締め付けてくる…」  音を立てて結合部が一瞬だけ離れた。深友の太腿目掛け、白濁が流れ出る。 「…ふ…ぁ…」 「そんな心配するなよ」  もう一度差し込み、最奥を突くと深友が背中を仰け反らせた。 「やだっ…まこの顔、見たい…」 「このままだと逆上せそうだもんな…風呂から上がろう」  くったりと力が抜けた深友を支え、誠人が湯船から上がると濡れた身体を拭うこともせず、直ぐに寝室に転がり込む。布団は既に敷いてあり、その上には持参したタオル地でできたシーツを敷いてある。そのまま深友を横たわらせ、腕の中に閉じ込めて彼の唇に噛み付くようなキスをした。言葉にならない叫び声をあげて、深友の理性が果てそうになる。 「…まこ、っ…むり、かっこいい、好き…!」 「ははっ、なんだそれ…顔だけかよ?」 「そっ、そうじゃなくて…!誠人の全部、好きだから」 「ありがと。…深友、愛してる」  唇から顎、頬、喉と舌を這わせていき、肉付きのいい胸元にキスを降らせる。乳首を強く吸い、舌先で掻き回す。白い肌を強く吸えば、花びらのような紅い痕になって残った。  胸から腹、下腹部、そして衰えることを知らない剛直に口つけると、痙攣した先端からは絶えず蜜が漏れ、シーツに染みを広げていく。 「…おいっ…!最初から飛ばしすぎだって…!」 「仕方ないだろ、ゆうが可愛いから……つい、加減できなくなって」  深友の手に自分の手を重ね、深友の手の甲を染色液で黒く染まった爪先でカリカリと優しく引っ掻く。息も絶え絶えなのに、聞こえる甘い声が鼓膜を擽る。目の前の愛しい恋人が、まだ満足していない様子に思わず笑みを漏らした。無論誠人自身も、深友が足りていない。 「なぁ、次は我慢するなよ?ちゃんと気持ちいいって言わなきゃ分からないだろ」 「だって、誰かに聞かれたら…!」 「大丈夫、ここは離れだし誰もいないから」  恥じらう彼の耳元で、誠人が優しく囁いた。 「……もっと、深友の声が聞きたい。聞かせてくれよ」  誠人が布団の上に座り、裸の深友を抱き起こした。向かい合わせになって互いの顔を見つめ、何度も唇を重ねる。  彼は深友の臀を支える手に力を入れて持ち上げ、今なお反り立つ楔で下から穿った。 「あぁぁっ…!」  深友は目の前が白黒に点滅し、自分がこんなにも誠人を求めているのだと実感して誠人の背中を抱き締め、両脚を巻き付ける。 「はあっ、はぁ、誠人、すき、もっと欲しい…!」 「知ってる」  笑いながら深友の身体を揺さぶり、胸元から肩、首へと次々しるしを刻み込む。鬱血痕と歯型が残っているが、深友は恍惚とした表情で全て受け止めている。  何度も名前を呼び合い、身体を揺さぶって蕩けきった体内を掻き回した。 「やらぁっ…また、イくっ…」 「ゆう、その顔エロすぎる…堪んねぇよ」  深友は絶え間なく嬌声を上げて絶頂の波に飲まれ、誠人が3度目の射精を終える頃にはくたりと全身から力が抜けていた。 「深友、大丈夫か…?」  「…無理。うごけない…。まこは絶倫オバケかよ…」 「ごめん、ちょっとやりすぎたな…。汗、流してやる」 「んん…」  誠人が深友を持ち上げるとだるそうに身体を起こし、誠人の首に手を回して、囁きかける。 「そのあと……寝て起きたらまた、ちゅーして」 「………」  何も言葉を返さず深友を抱き上げ、誠人の足は露天風呂に向かう。抱き上げられはしゃぐ深友に、誕生日おめでとう、と告げた。  空にはいつの間にか、大きな月が浮かんでいた。 
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