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このサークルの合宿は、以前からの暗黙のルールで、アルコールと不純異性交遊は禁止とされている。いつの時代の話だよと裏では皆がブーブー文句を言っているが、たしかにアルコールが入り、あっちでもこっちでも盛がついてしけこまれては、収拾がつかなくなる。健全で、真面目なサークルであることをアピールしたいらしい。大学生らしく(?) とはいえ密会しているカップルも、中にはいそうだった。
私は、加納君とつき合っていることは麻衣子にも言いそびれていて、結局まだオープンにしていない。
最近は二人だけで話をしていても、色恋で見られることはなくなっていた。
*
食堂で彼が居ることに気づいて目が合い、なぜかそのまま 視線を外せなくなった。
〝お疲れさま~。今日滑ってるところ見たよ、すごいね〟って、駆け寄って話せばいいんじゃないの? でもできない。
その不自然さに耐えられなくなり、私の方が先に目を逸らした。
話さなくても感じる、顔を見ただけで。
二人とも、似たようなことを考えていた。
こんな非日常的な場所にいるのに、どうして一緒にいられないのだろうね。
✉️
《もう寝た?》
《寝てないよ》
ベッドがそれぞれ四台ずつ設置されている四人部屋には、麻衣子や先輩方も一緒にいて、電話すら儘ならない。
できるのは、布団に包まってメッセージのやり取りをするだけ。
すぐに既読が付いた。
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