12月31日 side A

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 十二月三十一日 午後四時二十二分。 「────寒っ……」  会社の外に出ると、まだ夕方だというのに大分薄暗く、寒波の影響で昨日よりもぐっと気温が下がり、冷え込んでいた。  空を見上げると、案の定ちらちらと、  白いものが舞い始めていた。 ❄️ 「うわ、雪だ雪だ、雪が降ってきましたよ! 加納さん」 「子どもみたいだな。これぐらいの雪なんてめずらしくないだろ」  駅に向かって並んで歩きながら、彦田くんが楽しそうに、暗い空を見上げる。 「雪なんて、東京に出てきて初めて見ましたからね、僕 南国育ちなんで」 「ああそうだったな、じゃあめずらしいか」  きっと、沖縄出身の彦田君にはわからないだろうな。なんとなく、雪の匂いがする。 「──加納さん、それで結局、今夜は どこに行くんですか?」 「……まだ言うかしつこいな。どこでもいいだろう?」 「ええっ、だって僕 営業ですから、そのしつこさが君のいいところだなって、加納さんに先日褒めていただいたばかりじゃないですか。加納さんのプライベート謎過ぎて、興味津々なんです僕」  たしかに褒めたな、ついこの間。  だけど言えるかよ、こんな話。 「彦田君は、今の彼女とつき合って何年位になるの?」 「えっ、話変えた、僕の話はいいですよ」 「同じ気持ちだよ、俺の話はいいですよ」 「じゃあ、えーと……四年位ですかね、社会人になって わりとすぐつき合ったんで」 「四年か……。他の女性に目移りしない?」 「えっ、僕は浮気なんてしたことありませんよ! でも、目移りはしますね、そりゃあしょっ中、あ、この子可愛いドッキドキ、みたいなのはよくありますよ。……でもまあ、一生ものって考えるとやっぱ、彼女しか考えられないっていうか大事なんで、無理ですね浮気は、上手くやれるタイプでもないし」 「別に浮気したいかどうかを聞いてるわけじゃないんだけど。まあ彦田君らしいよね」  いいなあと思う。そんな風に思える相手と一緒にいられて。俺もしみじみ好きだと思える相手と、一緒に歳を重ねたい。  今日この日だから、尚更、そう思うのかもしれない。  大晦日、今年最後の日は、また思い出してしまう、毎年毎年────。 「……人の話なんだけどさ」 「はい。人の話?」
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