12月31日 side A

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 淹れたてのコーヒーを受け取って、窓際のカウンター席にいつものように腰を下ろす。  冷えた身体に、熱々のコーヒーが沁みる。美味い、こういう味だったか、  ホンジュラス。  なぜかしんみりして、何も考えられなくなって、静かに窓の外を眺める。  雪の勢いが、少し強くなってきた。  積もらないだろうが。  俺の方は、先程までの勢いは少し落ち着いたが、勿論 火は消えていない。  深い、溜息。  会いたかったな、今日。  連絡を取ろう、雪妃に。  この店が接点となって、そのうち会えるんじゃないかとかのん気に構えていたけれど、無理のようだ。そんなことをしている間に、今のこの気持ちが逃げてしまう。雪妃もどこかへ行ってしまう。  思い立ったが吉日、鉄は熱いうちに打て、今会わないとダメな気がする、俺が。  空から降って来る雪を、ぼんやり眺める。  彼女は今頃、誰と一緒に自分の誕生日を祝っているのか。 「加納君?」  まるで幻聴のように彼女の声が聞こえて、ついに頭までおかしくなったかと思いながら、後ろを振り返る。  「…………」   けれど、幻聴ではなかった。  驚き過ぎてひと言も声が出せないという、初めての経験をする。  全然変わっていない。  感動するくらいに。  話し方も声も、柔らかくて 凛とした空気を纏い、想像していた以上に、雪妃だ。  変わらないどころか、すごくいい。  会えばわかるさ、こうなると思ったよ。  嬉しくて、またすぐに君に夢中になる。 「──おめでとうだよな、今日(・・)」 「え……」 「12月31日、誕生日だろ」  不思議そうな顔をして、ハッとしたように目を丸くする。  はは、忘れてたのかよ、自分の誕生日。 「おめでとう」 「覚えててくれたの?」 「……いや、今 思い出した」  今、思い出した? いやいや、  またそんな適当なことを言って………違うだろ? そんな訳ない。  
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