春のシール、冬のアイス

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 緊張していた。スクールバッグの持ち手をぎゅっと握りしめてしまうくらいに。  土曜日の授業は午前で終わり。テスト前なので部活組もそのまま帰宅。とは言え、育ち盛りの中学生が家に着くまで我慢できるはずはなく。冬の冷たい空気で満ちる昇降口では、寄り道について話す声があちこちで響く。友達とする当たり前の会話。  その輪の中に、僕はいない。  いじめられているというわけではない。挨拶すれば返ってくるし、クラスから弾き出されているわけでもない。ただ「友達」ではないというだけ。同い年のクラスメイト、それ以上でも以下でもない。
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