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それは紅く光る月が綺麗な夜だった。魔力が満ちるこの日を、ここに住む誰もが待ち望んでいた。薄暗い森の中、赤い月明かりだけが彼らを照らしている。
大勢の大人たちの中心に、一人の少女がいた。緑色の髪に赤い瞳を持つ、まだあどけなさが残る少女だ。その東部からは獣耳、お尻からは尻尾がのぞいている。
「エリゼルトイーボア、ミア」
「エッタ、シュトルクディーボアディスタ『メシャルタ』」
「ミーシャリーベン・デ・リュウエル。シュトルクディーボス」
大人たちが口々に彼女に声をかける。ミアと呼ばれた少女は時に笑顔を見せながらそれに答えていく。
大人たちは順々に詠唱を開始していく。やがてそれは一つの詠唱になり、少女の前に月と太陽の意匠を施した光の門が現れる。その門がゆっくりと開くが、門の向こうは光に包まれていて見えない。
それでも少女はフード付きのロングコートを羽織ると一歩を踏み出した。
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