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東雲は睡眠から目覚める。寮の部屋の窓掛けを開き陽の光を部屋に入れ、顔を洗い、握り飯だけの朝食をとり歯磨きをする。そんなルーティーンを終え、伝書を確認する。日報から部下からの報告書、そして――差出人の書かれていない封筒。彼はその封筒に少し苦い顔を浮かべたあと、丁寧にその封筒を開ける。
中には一枚の紙と一枚の写真。内容は簡潔なもので、『この幼子を調査せよ、可能であれば生け取りにするべし』というものだった。
写真には緑の髪に赤い瞳を持ち、面妖な獣の耳と尾が生えた少女。目の色、髪色共にどう見てもこの国の人間ではない。それにこの耳と尾は作り物だろうか? と東雲は思考する。
そして、紙の最後の一文に目を通す。『これは軍上層部からの密命である。拒否権は貴様にはない、東雲 誠』と記載がある。文字は達筆であり、その文章は有無を言わさぬものであった。
疑問より前に足が動く。そういう密命が彼に下るのは一度二度ではない。すでに慣れた様子で彼は軍刀を腰に携えた。
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