綺麗な娘さん

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父は子爵という貴族で、私は長女に生まれた。 目立って裕福でもないけれど、際立って貧乏というものでもない。 私には妹が3人、弟が1人いる。 私は19歳。妹は17、16、12。弟は9歳。 年の差があるのは母が違うから。 父が持つ片田舎の小さな領地では綿花栽培をしていて、織物や布を特産としていた。 私の母は商家の人で、父とは政略結婚。 17歳の妹、シシリーは同じ母。 母は私が幼い頃に亡くなった。 16歳の妹、サフィアは別の母。 サフィアの母は見たことはない。 サフィアの母が亡くなったから父が引き取ったのだと聞いた。 12歳の妹と9歳の弟は今いる後妻となる母の子。 後妻の母は私の母と同じ商家の人。 私の母が亡くなり、幼い子供たちのために再婚をと政略絡めて連れてこられた人だと思う。 そこにも手をつけて子供を産ませているのだから父が女好き。 後妻がきたのは私は5歳だったか。 3歳の妹の手をひいていた。 2歳の妹、サフィアは使用人に抱き上げられていた。 新しい若いお母様は私たちを自分の子として育てると優しい笑顔で仰ってくださった。 どちらかと言えば私と妹たちとよく遊んでくださって、お父様とはあまり一緒にいらっしゃらない方で、私にとっては姉のような存在に思っていた。 1年たって妹がまた増えて、お母様に謝られたのは記憶にある。 幼い私にはその意味はまったくわからなかったけれど、お父様を継ぐ者がいないことについてだろう。 男児が生まれなければ長女の私が婿養子をとって家を継がなければならない。 それでもまったくかまわないと思っていた。 物事を少しは見えるようになって、サフィアへの対応だけが使用人たちの間でなにか違うことに気がついた。 私にとってはどれも私の妹であって、母が違うと言われてもまったく理解できず。 体が弱いからと言われて、私をお産みになられたお母様が亡くなったことを考えると使用人の対応の違いを渋々と受け入れた。 亡くなるというのは二度と会うことはできないこと。 サフィアがいなくなるくらいなら仕方ない。 家の外へ連れ出して、シシリーと3人で花冠でも作って遊びたかったけれど。 シシリーと花冠を作ってサフィアへのお土産に持って帰って、ベッドにいるサフィアをシシリーと囲んでよく話していた。 私にとっての誇りは妹たちの面倒をみること。 少し上なだけでも先に家庭教師がついて読み書きを学ぶことになる。 妹たちにも私が教えてもらった読み書きを教えて、私が読み聞かせをする。 お母様はミネアのお世話があるし。 物語を読んでと妹たちも私にねだってくれるから。 ただ、サフィアにあまり構っていると使用人が邪魔をしてくる。 私がサフィアのお母様のようになりたいのを邪魔する。 私にとって煙たい存在のその使用人はそのうち大きくなって話せるようになったミネアのワガママで解雇されるのだけど。 弟が無事に産まれたら私の家督相続の話もなくなった。 とはいえ。 子爵の子ということで、私は今度はいい嫁ぎ先をとなる。 社交界デビューを果たしたら、いくつかの候補がすぐにできた。 お父様が厳選して商家へとされた。 顔合わせで見た、未来の私の旦那様は垢抜けない方ではあったけど、悪い人ではなさそうで了承した。 何回かお会いしているうちに、いつからかどこからか、私の未来の旦那様となる人はその従兄弟のおじ様にされた。 さすがに嫌だった。 あの垢抜けない方でいい。 笑顔は可愛らしかった。 平穏な日々を共におくれそうな方だった。 高望みをすることもなく。 恋することもよくわからず。 素敵だと思った異性もなく。 少しの好みはあれど、それも叶うことも無く。 私はそのまま宛てがわれた家に嫁にいくしかないと思っていた。
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