綺麗な娘さん

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レルネへとサフィアがいってしまったからといって、私の生活は変わるものはない。 悲嘆しているよりはシシリーのようにせめて婚前に恋をと求めて、パーティーに出る。 いい人がいれば一夜限りの遊びとなっても…と思っているのに、パーティーに出るような人はだいたい同じメンツ。 貴族の遊び人はいらない。 一夜限りという遊びはしやすそうではあるけれど、その下心が透けすぎていていらない。 グラナード様のような真面目な方がいい。 商家のほうならと思ってみても、こっちはこっちでまた違う遊び人がいる。 私の旦那様となる予定のおじ様のような下品さでもないけれど。 あれは探すほうが難しいくらいの人かも知れない。 よくあんな人を私に宛がおうと思ったなというくらいの人だと思う。 その底辺とするレベルが低すぎて、本当にあの人以外なら誰でもいいのでは?と思う。 子爵家のお金だけを目当てに考えてるような芸術家、音楽家、商家。 顔はよくて口はうまくてもなにもときめかない。 こっちは一夜限りの遊びにはならずにつきまとわれそう。 それはいや。 ゴシップネタにはなりたくない。 男あさりをしているはずなのに、まったくもってなにもあされない。 シシリーはこんな私の男あさりにつきあっていい人を見つけたようなのに。 そんな日々を過ごしていると、サフィアから結婚式の招待状が届いた。 とても立派な封書で、公爵家の封蝋。 子爵家には決して縁がなさそうなもの。 サフィアが嫁ぐレルネへいくことを楽しみに封をあけると、王城で執り行われると書かれていて。 私たち家族はお父様ー!?となった。 お父様もその予定はなかったかのようで、かなり戸惑われて。 お母様はレルネならいきたかったけれど、と、王城へいくことは遠慮されて留守番するとされた。 弟もお母様にならうようにいかないとして、ミリアは王城へいってみたいと目を輝かせて言う。 王城なんて子供がいくところじゃない。 この国の王様がいらっしゃるようなところ。 政治の中枢。 お父様は行かれていらっしゃるようだけど、私たち家族を伴ってパーティーに行かれることもない。 田舎貴族と馬鹿にされそうでどこか恐ろしい。 でも可愛い妹、サフィアの晴れ姿を見に行かないという選択肢はない。 サフィアの式に間に合うようにドレスを新調したり、王都での流行りを調べたり。 お母様とシシリーとなんとか乗り切ろうとがんばった。 流行りのメイクやアクセサリーや髪型。 私やシシリーが結婚するわけじゃないけど、サフィアの恥にならないようにと。 王様にご挨拶となるかもしれない。 礼儀や作法も勉強し直して決戦の日はきた。 そんなに畏まらなくても大丈夫だとお父様は仰られるけれど、私とシシリーは緊張で震える。 ミネアはとてもお気楽だ。 お母様のかわりとして、私がしっかりしなければ。 式への支度は王都で整えることにして、長い旅路は新調した普段着で馬車に揺られる。 「そういえばお父様、私たちが泊まる宿はどこになるのでしょう?王城から離れた場所なら馬車を呼ぶ時間をもう決めておいたほうがよろしいのでは?」 私は予定を考えながら、お父様に聞いてみる。 「……城内で迎えにきてくださるそうだから。気にしなくてもいい」 お父様は言いにくそうに仰られる。 その意味をよくよく考えてみた。 思い当たったものに私はそういうこと!?と確認するようにシシリーを見る。 シシリーも私を見る。 「王城に泊まるのですかっ!?」 私とシシリーが聞くと、お父様は頷かれた。 「わーい。お城に泊まれるー」 なんてミネアは喜ぶけれど。 まったくもって喜べない。 田舎貴族がなぜ皇太子殿下と結婚になるのか。 分不相応すぎる。 グラナード様はいい方ではあったけれど。 皇太子殿下ということをすっかり忘れていたように思う。 知っていたのに。 レルネ領主様としてしか見ていなかった。 本物の王子様やないかい。 今更になって私が頭を抱える。 なるようにしかならない。 そう思えるまで、馬車の中はしーんと静まり返った。 ミネアの能天気さが私も欲しい。 馬車にどれだけ揺られたか。 王都へとやっと到着したのは夕暮れ。 馬車を途中下車して、お手洗いへいったり、ご飯を食べたりと寄り道をしたからかもしれないけれど。 王都の華やかな街並みに目を奪われる。 綺麗に整った石畳の道をいくと王城が見えた。 馬車は当然のようにまっすぐ王城へ。 そこは違うと思う。 王都へくるのはよくても、そこは違う。 城門を入ると兵士に検問をされる。 車窓から車室の中を確認された。 私とシシリーは軽く会釈。 ミネアもにっこり笑って兵士に手を振る。 兵士は恥ずかしそうに会釈を返してくれて、御者となにかを話したあと、馬車は動き出す。 城内は広い。 どこまでいくのかと思うくらい走ったあと、馬車は止まって御者が扉を開けた。 「こちらの建物がバールミントン様の宿となるようです」 御者の言葉にそこの建物を見上げた。 とっっっっても立派。
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