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このドレスで宴の席にも行こうと思っていたのに、メイドがもっと派手にと求めて、衣装を用意してくれるなら?なんて言ってみたら、本当に用意された。
しかもどこか高価なもの。
私たちは王族ではないよっ?とメイドに言ってみても、王様が用意したと言われると従うしかない。
「式典ではなくパーティーなのですから。派手に飾っていいのですよ」
「侯爵家もいそうだし、そこらへんの男あさりしてもいいのかしら?」
ダメと言われることを望んで言ってみると、メイドはダメなんて言わなかった。
「アネッサ様なら声をかければどんな男も釣られますよ」
「身分違いだと反対してもらいたいところです」
そうじゃなくて、と私は言っておく。
「身分関係なく落とせます」
メイドはにっこり笑って、私が負ける。
ここのメイドはなんだか自由だ。
しかも楽しそうに私を飾ってくれる。
「王様はお妃様をとられないんですか?」
「まったく女性の影も噂もありませんね。まだお若いのですから、隠居老人のようにされなくてもいいと思うのですが。どうしてです?」
「女性の主がいないからあなたたちは自由なのじゃないかと」
「それはありますね。お妃様がいらしたら厳しく叱りつけられそうな失態も王様は許されるので。アネッサ様はいかがです?王様の妃となるのは」
「お相手のほうが遠慮されますよ、そんな身分違い」
「アネッサ様は飾りたくなるくらいお綺麗ですよ?サフィア様は可愛らしくて人形のようで素敵ですが、アネッサ様も飾りがいがある方です」
だから楽しいとでも言ってくれそうだ。
鏡の中の私は派手に髪を飾られて、さすがにやりすぎと思う。
勘違い田舎貴族と思われそう。
真っ赤な紅をつけて、どこから持ってきたのか大振りな豪華なアクセサリーをつけて。
地元ならこれでもいいかと思うけれど、こんなに目立つ姿ではなくていいと思う。
シシリーも飾られまくって、困り顔で苦笑い。
ミネアは私やシシリーみたいなのがいいと言ってるけれど、ミネアには可愛らしく幼くされてもっとなんとかしろとメイドに不満をぶつけている。
やめなさいと私はミネアを抑えて、時間にはパーティーがあるホールへ。
お父様の手を借りて馬車を降りると、まわりの視線が私へ向く。
注目を集めてしまうことに嫌になりながら、片っ端から男あさりしてやろうかとメイドに盾突く気持ちで思ってしまう。
妹の結婚祝いの席でやることではない。
おとなしくしておこうと思っていた。
地元の社交界で影で囁かれる私の悪口がある。
男好きの淫乱女。
貴族の娘だからといい気になってパーティーで男をあさりまくり。
実際はこちらから声をかけるまでもなく向こうから声をかけてくるし、誘ってくるけど、いいと思える人がいないから婚約者となる人としかデートしたことがない。
それでもいないかなと目で探してしまっているから、男あさりに否定はできない。
相手からくる口実を与えてるのは私のほうなのは認めるからなにも言えない。
あさってなんかいないやいと拗ねた気持ちになったりする。
乾杯とグラスをサフィアに掲げて、1口お酒に口をつける。
お父様といるようなこんな場所で声はかけられないだろうと思っていたら、知らない貴族がお父様に声をかけてきて、私とシシリーの紹介がされる。
どこかまだ政略の駒にされそうで嫌になる。
婚約者はいるから体だけとか。
しかも相手はまた下品なおじ様とか。
私にはお父様への信頼がない。
よく考えれば私とシシリーのお母様がいらっしゃるのにサフィアをつくるようなことを他の女にされていて。
お母様が亡くなるとまた別の人が後妻にきてその子供もできて子沢山。
スケベ親父とどこかお父様を見ている私がいる。
それでも声をかけられたり、話が振られると愛想笑いで丁寧に挨拶をしてみせる私。
お父様に失脚されたら路頭に迷いかねない。
私だけならかまわないけれど、妹たちやお母様のことを考えるとそうはいかない。
サフィアのことを考えるとこの場では更に下手なことはできない。
社交の場に出ている。
立場は弁えているつもりだ。
「バールミントン子爵」
なんて呼ばれて、お父様ははいはいと愛想良くお話しようとされて、相手を見ると固まられた。
相手は背の高い体格のいいイケメンなおじ様。
「君の娘を私にも紹介してくれないか?」
どこかとても馴れ馴れしくお父様に声をかけられる。
爵位の高い方だろうか。
どこか王様に似ているお顔だけど、王様ならサフィアたちのところにいらっしゃるはず。
「わ、私もグラナード様とサフィアに挨拶をしてこようかな。アネッサ、シシリー、いこうか」
お父様はどこかその方を無視でもなさるかのように仰る。
商人で成り上がったお父様にしてはめずらしい反応だ。
でもそれは相手に失礼すぎる。
「お父様、お声をかけられています。お父様より年若い方とは言え、失礼ですよ?初めまして。アネッサと申します」
私はお父様に注意をして自分から自己紹介。
「シシリーと申します」
シシリーも私についで挨拶をしてくれる。
「ミネアと申します」
ミネアもきちんと挨拶してくれて、偉い偉いと私はミネアの背を撫でる。
お父様はー?とお父様を見ると、お父様はどこか怯え顔で逃げ腰。
私たちの視線を受けてお父様は更に一歩後ろへと下がられた。
侯爵家の方だろうか?と相手を見ると、にっこりと私に微笑まれた。
よくわからないながらも、私もこんな父ですみませんと笑顔を返しておく。
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