幕間 ──1──

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「……ッ! わかりました! ではもう結構! これで失礼させていただく!」 「レジン、待つのだ。 まだ話は……」  そう言って俺は、父上の命も無視し、怒りを露にして謁見の間から出ていった。   「どいつもこいつもふざけやがって! クソクソクソクソクソ!」 「げほ、げほっ! うぅ……」 「も……もうお止めください、レジン様! これ以上暴力を振るっては、その奴隷の体力が持ちません! どうかお止めください!」 「ええい、うるさい! 同じ目に遇いたくなければ邪魔をするな! わかったか!」 「…………」  黙って引き下がる執事を横目に、俺は奴隷の女をしこたま蹴り続ける。  あの男にされたように、何度も何度も。 「ははははは! はははははははっ!」  なのに全然気が晴れない。  恨みが、怒りが増すばかりで、鬱憤が一向に消えやしない。  どうしたらこの怒りは収まる。  やはりあの男を殺さねば、心にかかったこの靄が晴れることは……。 「ふふ……随分と荒れていらっしゃいますね、レジン様。 何か嫌な事でもあったのですか?」 「てめえか、イリーナ……」  イリーナ=アルタイル。  此度の進軍に最も貢献した功労者で、魔物を制御下におけるなる物を産み出した赤毛の。  それがこの女、イリーナである。
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