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「こ……こんにちは、村の皆さん…………ぼ、僕はアンドリューお父さんの息子のリュート、です。 あの……これからは僕とも仲良くしてくれると嬉しいな。 えへ」
見よ、これがこれまでに培った演技スキルの一つ。
モジモジしながら上目遣いで甘える仕草をする、だ。
これにかかったら最後。
抵抗できる大人など存在しない。
全員漏れなくこうなる。
「か、可愛いー! なにあの子、めちゃくちゃ可愛いんだけど! ナデナデしたーい!」
「こら! 領主様の息子になんて口を聞くんだい、この子は! すいません、リュート様。 娘には口酸っぱく言い聞かせておきますので、ここはどうか……」
「あ、あの! リュート様! 一回だけで良いのでギューッてしても良いですか!? お願いします!」
「お前も何を言っているんだ! やめなさい! 相手は貴族だぞ、命が惜しくないのか!」
計画通り。
どうよ、俺の可愛さは。
これぞ子供の特権って奴だ。
存分に愛でるがよい。
「ギューッ! これで良い、お姉ちゃん?」
「……アンドリュー様、すいません。 この子、お持ち帰りします!」
「…………へ?」
「ズルい! 私にもダッコさせなさいよ! ほらリュート様、こっちも空いてますよー」
「リュート様に触らないで! 私が面倒見るんだから!」
やばい、効きすぎた。
射止められた女の子達が、やいのやいのと俺の争奪戦を始めてしまったではないか。
このままだと厄介な人が武力介入し始めない。
騒ぎが大きくならないうちになんとか止めないと。
じゃないと父さんが……。
「ははは、リュートはモテモテだなぁ。 流石は僕の息子。 将来が楽しみだ」
おい、それどころじゃねえんだよクソ親父。
本当にお持ち帰りされる勢いなんだぞ。
止めろよ。
と、数人の村娘の奪い合いに目を回し始めた最中。
突然村の入り口に魔方陣が────
「あらあら、これは一体どういう事かしら。 皆さん、説明してくださる?」
「おお、これはこれはマリア様! ようこそおいでくださいました! どうぞこちらへ! 今歓迎の準備を……」
来ちゃった。
今一番来て欲しくない人が、テレポートで来ちゃった。
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