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「だったらもう一度!」
「……っ! ヴィクター、逃げて!」
「冗談じゃねえ! この俺様が背中を見せるような恥を…………しまっ!」
ドラゴンが振り落とそうと身体を大きく揺すった直後、耐えきれなかったヴィクターは空中に投げ出され、そして……。
「ヴィクター!」
「く……クソッタレがあああ!」
鋭い牙で食い殺される直前。
「てやっ!」
推定一トンはありそうなドラゴンは、数十メートルふっ飛び、瓦礫に激突した。
俺の飛び蹴りによって。
「え……は…………? な、なに? 今、何が起きたの? なんでドラゴンが……」
「ぐっ……」
「……あ」
おお、腐ってもSランクなだけはあるなぁ。
地面に叩きつけられたのに、まだ息をしている。
骨は幾つか折れてるが、この程度なら俺の治癒魔法でちょちょいのちょい。
「ヒーリング、っと。 おーい、あんた大丈夫か? 一応治したけど、他に痛いとこない? あったらそこも治すけど」
「て、てめえ……何しに、来やがった…………あんな奴、俺一人でも十分……」
強がれるなら大丈夫だな。
「いんや、あんたじゃあいつには勝てねえよ。 だから……」
「ヴィクター!」
駆け寄ってきたメリッサに任せ、俺は神竜へと歩みを進めていく。
神竜もまだまだ元気なようで、唸り声を上げながら立ち上がった。
大したもんだ、流石はドラゴン。
三割とはいえ俺の蹴りを食らって物怖じしないとは、なかなか見所がある。
これは期待してもよさそうだ。
「俺に任せとけよ、先輩!」
「おい、待てやクソガキ! てめえなんぞに何が出来……!」
と、ヴィクターが叫ぶ間に、俺はドラゴンに接近。
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