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「まずは小手調べの……ジャブ、ジャブ! からのアッパー!」
噛みつこうとしてきたドラゴンにジャブを二回当て、仰け反った所で懐に入り込んで顎にアッパーをかました。
「な……」
しかしドラゴンは倒れず、なんと耐えきったのだ。
こんな嬉しい事があるだろうか。
今まで戦ってきた魔物はジャブの一つですら耐えきれず、死んでいった。
なのにこいつはジャブどころか全力の二割のパンチを耐え、まだ戦おうとしている!
これは喜ばずにいられない!
「へえ、なかなか頑丈だな! 流石は魔王に匹敵するドラゴンだ! これなら多少本気でやっても大丈夫そうだな! 頼むから死んでくれるなよ、神竜!」
「ガアアアアッ!」
ドラゴンは先手必勝と爪で切り裂こうとしたが、俺はそれを手刀で砕き、腕を掴んで背負い投げ。
「なんなんだよ、あれ……なんなんだよ、あいつは……!」
「あ、あたしさ……さっき見ちゃったのよね。 あいつが、ドラゴンを蹴り飛ばしたところを……」
「……な、なに?」
降参した犬のように仰向けになったドラゴンの尻尾を掴んだ俺は、そのまま振り上げ、ピザ回しの如くブンブン振る。
そして、何度も何度もビタンビタンとドラゴンを地面に叩きつけた。
「夢でも見てんのか、俺ぁ……」
「ふふ、気持ちはわかりますよ。 あんな光景見たら信じられませんよね」
おっ、メリルとアイン発見。
なんだ、荷台に隠れてたのか。
「でも、あれがカズトさんの実力なんです。 あれがあなた方がバカにした、彼の本気。 よく見ててください、本物の強者の戦いを。 まあ、あれでもまだ半分も本気だしていないのでしょうけど」
「嘘、でしょ……」
「………………」
「マジで!?」
いや、お前が一番驚くのかよ。
「……っと!」
今の一瞬を突かれたか。
ドラゴンは俺の手から逃げ出すと、飛び上がり大口を開け始めた。
口の中には炎がチラチラ見えている。
「ちょ、あれヤバくね? なんか吐きそうなんだけど!」
「チッ、ブレスかよ!」
俺だけなら火属性耐性レベル10で蚊に刺された程度の被害しかないが、後ろに控える四人は別だ。
確実に焼け死ぬ。
はぁ、しょうがないなぁ。
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