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「ひっ!」
「う、うわあああああ!」
吐き出された炎のブレスに十人十色の反応で死を覚悟する、が。
「属性は無、構成は半球、範囲は……全域! 結界魔法、アヴァドン!」
「わああああ……あ? あれ、熱くねえ……?」
やや脆いが広範囲をカバーする結界魔法アヴァドンが、誰一人として火傷すら負わせなかった。
恐る恐る目蓋を開く三人の視界に入った、半透明のバリア。
それを見たヴィクターとメリッサは、目を見開いて。
「んだよ、こりゃあ……」
「じょ、冗談やめてよ。 なによこの、結界魔法は……こんなの……こんなの…………聖女の魔法そのものじゃない!」
おばあちゃん、アヴァドン使えたの?
聖女様、すんごい。
ブレスは打ち止めなのか、視界が段々開けてきた。
流石に連続では吐けないようで、ドラゴンはこちらを見下ろしながら、威嚇をしている。
だが降りてくる気配はない。
となると、近接攻撃は不可能だな。
とはいえこのままだとまたブレスを吐かれかねない。
それは少々面倒。
「なら……撃ち落とすまでだ!」
言って、俺はギルドの試験で使った複合魔法の準備に取りかかる。
右手に炎の魔法陣を展開し、左手には雷の魔法陣を出現させる。
そしてその二つの魔法陣を掛け合わせて完成するのが、あの大規模魔法!
「ヴォルカノンバー────ッ!?」
「ガアアアアアッ!」
こ、こいつ……!
魔法を察知して突撃してきやがった!
この距離じゃ撃つわけには……!
「だったら……! はああっ!」
激突する間際、俺は大きく振りかぶった拳を思い切り振り下ろした。
ドラゴンの頭へと。
ドゴオッ!
「ギャウゥ…………」
狙い通り眉間に直撃した拳が、あれだけ頑強だったドラゴンの意識を一撃で奪い取る。
だけでなく、拳を通して放たれた衝撃波が大地を砕き、周囲の瓦礫という瓦礫を吹き飛ばした。
お陰で遺跡の入り口は見るも無惨な状況に。
はい、完璧に力加減間違えましたね、これは。
もうね、怒られる未来しか見えない。
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