初めての友達

6/6
前へ
/406ページ
次へ
 【一刀両断。 対象を一撃で屠る剣技。  結界、武器防具貫通属性】  …………。  よし、見なかったことにしよう。  うん、俺は何も見ていないし、何も知らない。  そういう事で、はい終了!  クローズボタン、ポチっとな。 「ふぅ、これで一件落ちゃ……」 「リュートちゃん? 何してるの?」 「くうううわあああ!」 「きゃあ!  どうしたのリュートちゃん、いきなり大声だして!」    そりゃ大声も出る。  いきなり背後から声かけられたんだから。 「もう、お母さん! 急に声かけないでよ! ビックリするから!」 「ふふ、ごめんね。 それで……何してたの?」  チラッと見た俺の手元には、一本の木の枝。  木の枝は見事に、未だのびている父さんの頬にぶっ刺さっている。   「お父さんで遊んでたの?」  母よ、言い方。 「うん、お父さんで遊んでた」 「そっかぁ。 でもそんなので遊ぶより、向こうの子達と遊ぶ方が良くないかしら?」  母さんが指差した先。  広場らしき場所で、六歳前後の子供が数人こちらに向かって手を振っていた。  中でも一人目立つ女の子が居る。  茶髪のツインテールがよく似合う、とても快活そうな可愛い女の子だ。   「おーい! 一緒に遊ぼー!」  女の子が声を張り上げると、周囲に居る子供達も揃って俺を遊びに誘う。  そんな子供らを見て、俺は……。 「うん! 行ってくるね、母さん!」 「行ってらっしゃい。 夕方には帰るから、そのつもりでね」 「はーい!」  子供達の元へと駆けていった息子を見届けた母さんは、小さく鼻息を漏らしながら父さんにこう言った。 「よかったわね、貴方。 あの子がようやく、普通の子になれそうで」 「……ぐぅ」 「…………ふふ、この男……どうしてくれようかしら。 うふふ……」  年々母さんの父さんを見る目が冷めていってる気がするのは気のせいだろうか。  気のせいと思いたい。  
/406ページ

最初のコメントを投稿しよう!

214人が本棚に入れています
本棚に追加