従魔契約

7/7
前へ
/381ページ
次へ
『主殿!』 「うおっ!」 「……?」  あまりの声の大きさについ驚いしまったせいで、二人が怪訝な顔で俺を見ている。 『リル、もう少し声を落とせ。 思念量(こえ)が大きすぎて、頭痛がしてきそうだ』 『も、申し訳ありません! ですが緊急事態ゆえ、何卒ご容赦を!』  リルがこんなに慌てるなんて初めての事だ。  それほどまでに切迫した問題が起こったという証拠だ。 『どうしたんだ、一体。 何があったって……』 『ヴァレンシール村が魔物の襲撃を受けました! その数、およそ一万! 皆、村へと避難しましたが、このままでは……主殿、どうか救援を! 我々だけでは守りきれません!』 「な……っ!」  その話を聞いた瞬間、俺は頭の中が真っ白になった。  だがそれは一瞬で、後悔は次第に自身への怒りへと移り変わっていく。  今まで何をしていたんだ、俺は。   一万の軍勢、故郷の危機、大切な人達の安否。  それを想うと、自分への怒りが押さえられなかった。  こうなる可能性を予見していた癖に、何もしてこなった自分自身に、俺は怒りを感じざるを得なかった。
/381ページ

最初のコメントを投稿しよう!

208人が本棚に入れています
本棚に追加