208人が本棚に入れています
本棚に追加
『主殿!』
「うおっ!」
「……?」
あまりの声の大きさについ驚いしまったせいで、二人が怪訝な顔で俺を見ている。
『リル、もう少し声を落とせ。 思念量が大きすぎて、頭痛がしてきそうだ』
『も、申し訳ありません! ですが緊急事態ゆえ、何卒ご容赦を!』
リルがこんなに慌てるなんて初めての事だ。
それほどまでに切迫した問題が起こったという証拠だ。
『どうしたんだ、一体。 何があったって……』
『ヴァレンシール村が魔物の襲撃を受けました! その数、およそ一万! 皆、村へと避難しましたが、このままでは……主殿、どうか救援を! 我々だけでは守りきれません!』
「な……っ!」
その話を聞いた瞬間、俺は頭の中が真っ白になった。
だがそれは一瞬で、後悔は次第に自身への怒りへと移り変わっていく。
今まで何をしていたんだ、俺は。
一万の軍勢、故郷の危機、大切な人達の安否。
それを想うと、自分への怒りが押さえられなかった。
こうなる可能性を予見していた癖に、何もしてこなった自分自身に、俺は怒りを感じざるを得なかった。
最初のコメントを投稿しよう!