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「リュート様! お父様達には私から説明しておきますので、リュート様は今すぐヴェルエスタにお戻りください! 今のヴェルエスタ領には、貴方が必要な筈です! 貴方が守るべきもの、守りたいものをその手で守ってきてください! ヴェルエスタ家の子息として、そしてリュート=ヴェルエスタとして!」
「……! ……わかった、行ってくる。 後の事は任せた、メリル!」
「はい。 行ってらっしゃいませ、リュート様。 ご武運をお祈りしております」
道中、受付のお姉さんをナンパしていたアインともすれ違ったが、アインには適当に理由をつけてはぐらかし、俺とエンドラはギルドから飛び出した。
「くっ……!」
相変わらずここの通りは人が多い!
これだから都会は!
どこか人通りの少ないか?
流石に人混みの中でテレポートを使うわけにはいかない。
どこか良い所はないか。
人通りが少なくて、なおかつ暗い場所は……って、そういえば確かあそこの路地裏に誰も通らない、都合の良い場所があった気が……。
「エンドラ、こっちだ!」
「ほーい」
エンドラを連れて潜り込んだそこは、かつてセニアを村に誘ったあの裏路地だった。
ここなら人に見られる心配はない。
「こんなとこ来てどうするの? というか、用事ってなに?」
「今からテレポートする。 どこか俺の身体に触れていてくれ。 一緒に跳ぶぞ」
何か言いたげなエンドラだったが、観念したのか、俺の手を握る。
「いいよ、お兄ちゃん。 いつでもどーぞ」
左手に広がっていく、エンドラの温もり。
俺はその、人ならではの暖かさを感じながら、転深の腕輪を発動させた。
「よし……じゃあ行くぞ、エンドラ! テレポート!」
やはり転深の腕輪は凄い。
魔法の中でも制御の難しいテレポートも何のその。
本来であれば一人転移させるだけでも一苦労なテレポートなのに、多人数同時に転送させてくれるとか、流石はチートアイテム。
規格外だ。
お陰でシャドウナイツの拠点。
森の中に作られた円卓会議場へと、一瞬にしてやって来る事が出来た。
転深の腕輪様々である。
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