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実力を隠すのも楽じゃない
「お前、リュートって言うんだっけ? 俺はサイラス! よろしくな、リュート! へへ!」
サイラスと名乗った頬に傷のあるやんちゃそうな子供が手を差し出した。
俺はその手を取り、あまり力を入れないようゆっくり握りしめる。
「うん、よろしくサイラス」
「えっと……僕はポックルって言います。 よろしくお願いします、リュート様」
サイラスがガキ大将ならポックルはいかにも頭脳担当って感じの容姿をしている。
眼鏡にキノコヘアー。
こういう大人しくて利発そうな子って、グループに一人は居るよな。
「僕の事はリュートって呼んで。 僕もポックルって呼ぶから」
「う、うん。 リュート……くん」
「はいはーい! 次はわたしの番だから、どいてどいて!」
この子はさっきの……。
「やっほ! あたしの名前はアリン! アリン=エイシャル! 今日からあんたのボスになる女の子の名前よ! しっかり覚えときなさい、おぼっちゃま! にしし!」
「へ……?」
「アリンちゃん、それはまずいよお……貴族の子を僕にしたなんて知られたら、ただじゃ……」
「はーあ。 リーリンってば相変わらずちっちゃいんだから。 そんなんだから背も伸びないのよ」
「背は今関係ないよぉ! ……関係ないよね? ねっ、ポックルくん」
リーリンと呼ばれた黒髪の少女が涙ながらに尋ねるが、ポックルはどう答えるべきかわからず、おたおたしている。
「むぅぅ……」
その煮え切らない態度のポックルに耐えかねたのか、リーリンは次に目があった俺に白羽の矢を立ててきた。
「リュート様もそう思いますよね!」
「え? う、うん……関係ないんじゃ、ないかな? 多分……」
「……そっかぁ、よかったぁ」
「ねー、まだ話してんのー? 早く遊びましょーよー」
自分が蒔いた種なのにこの言い種。
ワガママが過ぎる。
なんだこいつ。
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