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「すーはー、すーはー」
「……ふっ、流石は自分が主と認めた御方だ。 やはり貴殿に仕えて正解だった」
『主殿! 主殿! はっはっ!』
「はわわわわわ……あのお方、とてもカッコいいですぅ! まるで深淵の化身そのものですぅ! 憧れますぅ! ……あれ? なんでしょう、どこか見覚えがあるような……?」
めっちゃバレとる。
いかん、このままじゃあ父さん達にバレるのも時間の問題だ。
さっさと奴らを殲滅してしまおう。
と、俺は魔力を練り上げながら、別人の振りをすべく、実に中二病な猿芝居を始めた。
「矮小なる者共よ。 我が前に立ちはだかった事、後悔しながら死んでゆくが良い」
「おお、なんという神々しさ……あれこそが世界を統べる覇王の器! このルーク=アルブレム! 一生あなた様についていく所存でございます!」
黙れ、ルーク。
解任するぞ、このバカタレが。
「深淵より出でし、灰塵の落涙────」
魔力を解放した瞬間、俺の背後、両側に百近くの魔法陣が展開。
そして、
「メルトダウン」
全ての魔法陣から星屑が如く質量で発射された、火属性魔法バレットレーザー。
否、威力を底上げしながらも魔力量は抑え、なおかつ着弾時に爆発するよう改良を施したバレットレーザーの改良型。
メルトキャノンが、着弾と共に一万にも及ぶ魔物の軍勢を、瞬く間に塵にしていく。
「嘘だろ……」
「あれだけ居た魔物が、一瞬で……」
生き残った数十匹と後方で指示を飛ばしていた帝国兵は取り逃したものの、それ以外は全て灰塵と帰した戦場を目の当たりにし、誰もが口々にそんな言葉を口ずさむ。
「あなた……」
「うむ……」
父さん達も同様で、俺を見上げるその表情はとても複雑。
感謝と苦渋を舐めているかのような、そんな顔を浮かべていた。
「ガアアアアアアッ!」
「「「うおおおおおおおっ!」」」
エンドラの勝利の雄叫びに、勝利を実感した騎士達も、同じく雄叫びを響かせる。
だが俺の心は一向に晴れてくれなかった。
何故なら────
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