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後悔先に立たず
「ぐああああ……!」
「大丈夫ですか!? 今、治療しますので!」
「悪い、こっちにも治癒師を頼む! 今にも死にそうだ!」
「こりゃあもう足を切断するしか……」
村は案の定、酷い状況だった。
傷付いた騎士や冒険者が横たわり、治療を受けている。
犠牲となったのは、戦った者達だけじゃない。
戦う力を持たない子供やお年寄りも、犠牲になったようだ。
そこかしこから啜り泣きが聴こえてきている。
「リュート、戻ったのか」
「父さん……」
父さんも酷い有り様だ。
衣服に血が滲んでいる。
きっと中は傷だらけだろう。
俺がもっと早く来ていればこんな事には……。
「父さん、ごめん。 こんな時に遊びに行ってて。 こうなるってわかってたら……」
「子供がそんな事気にするな。 それに……」
父さんは俺をジッと見つめると、フッと笑って。
「なに?」
「……いや、なんでもない。 それよりも、すまないが怪我を治してくれないか。 まだ完璧に驚異が去った訳じゃない以上、倒れている訳にはいかないからな」
「うん、わかった。 ヒール」
治癒魔法をかけてあげると、父さんは心なしか少し落ち着いた顔色になった。
手遅れになる前で本当に良かった。
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