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「もう治ったのか、流石はリュートだな。 教会や診療所の治癒師なんかとか比べ物にならない腕前だ。 まあ、お前と比べられる方が可哀想というものか。 ……なあ、リュート。 先程のはやはりお前が……」
と、核心を突く内容を父さんが口にしようとした時。
遠方からサイラスが息も絶え絶えといった様子でこっちに走ってきて、
「リュート、帰ってきてたのか! 丁度良かった、今すぐ一緒に来てくれ! お前が来てくれねえと、リーリンが……リーリンが!」
そんな事を────
「ごほっ……ごめん……ね、お姉ちゃん……」
「リーリン! しっかりして、リーリン! なに弱気になってんのよ! 約束したでしょうが! わたしとあんたであいつを支えて、この村を良くするんだって! あれは嘘だったの!?」
「泣か……ないで、お姉ちゃん。 最後はお姉ちゃんの笑った顔が……見たいな」
「……ッ」
「リーリンねぇ……」
なんだよ、これ……どうしてリーリンが、血塗れになってるんだ。
腹が裂けてるんだ、片目が潰れてるんだ、あり得ない方向に腕が曲がってるんだ。
なんで……なんでリーリンがこんな目に……!
「リーリン!」
「リュ……ウト?」
駆け寄ると、その凄惨さがいかに凄まじいものか、手に取るようわかった。
このままじゃあ、リーリンは間違いなく死ぬ。
恐らく後、数分の命だろう。
治癒師が目を伏せて頭を振っている所からして、そう判断せざるを得なかった。
「リュート……くん……? 幻覚かなぁ……こんなとこにリュートくんが居る筈無いのに……」
「俺だ、リーリン! リュートだ! 助けに来たぞ! だからしっかりしろ、リーリン!」
呼び掛けるが、リーリンは虚ろな瞳で薄ら笑いを浮かべるだけで、他に反応はない。
「リュート……リュート、お願い。 妹を助けて……助けてくれたらわたし、何だってするから! 一生賭けてあんたに尽くす! だからお願い! 妹を助けて……!」
「……言われるまでもない。 当たり前だ!」
俺はシルトアウラ様とオウル様から頂いた、マンティコア皮の上着を脱ぎ捨て、リーリンの胸元に手を添える。
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