後悔先に立たず

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「死なせない! 絶対に死なせるものかよ! 戻ってこい、リーリン!」  リーリンに触れた右手に魔力と意識を集中させ、一心不乱に魔法を生成。  地面に俺以外にはまず解読不可能な綿密かつ難解な魔法陣を出現させ、最上位治癒魔法。  【リジェネレート】を発動させた。 「…………すぅ」 「ま、まさかこんな事が……」  なんとか上手くいってくれたか。  リジェネレートのお陰で、リーリンの破れた腹部や折れた右腕は元に戻ってくれた。  左目は眼球そのものが蘇生不可能なぐらい潰れているか、失くなっているかで治らなかったが、ここまで治っただけマシと思うべきだろう。 「リーリン……よかった、本当に……」 「へへっ。 やっぱお前はすげえよ、リュート。 あんな状態から治しちまうなんてよ」 「うん、流石はリュート様だよ」  呆然としている治癒師を余所に、褒め称えてくる二人に照れていると、 「え……?」  突然アリンが抱きついてきて、泣きながら何度も何度も感謝の言葉を口にする。 「ありがとう……ありがとう、リュート。 妹を救ってくれてありがとう。 あんたが居なかったら今頃リーリンは……うぅ……」 「アリン……」  俺はそれ以上言葉にせず、アリンの背中をただたださすり続けた。  彼女が泣き止むまでずっと。  
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