本物の悪夢

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「……私からお前達に言うべき事は、ただ一つ。 何故今まで奴らの動向を掴めなかったのか、という事だ。 そのせいで多くの犠牲が出たわけだが、もし理由があるなら述べてみよ」 「そ、それはその……」 「ルーク、自分が話そう。 ……この度は申し訳なかった、リュクス殿。 言い訳になってしまうが、奴らはなかなか尻尾を出さなくてな。 情報を掴むのが遅れてしまった。 その結果対処が遅れてしまい、誠に申し訳ない。 謝って済む問題ではないが、ここはどうか謝らせて欲しい。 此度は貴殿の民を守れず、すまなかった。 そしてどうか我々に、挽回の機会を与えてはくれないだろうか。 頼む」 「わ、わたしからもお願いしますぅ!」  元暗殺ギルド長のシンシアでも奴らの尻尾は掴めなかった、か。  それはつまり、それだけ用意周到だっという事。  だとしたらこいつらに責任を負わせるのは酷。  そもそも一番悪いのは、帝国の奴らなんだ。  こいつらに当たるのは筋違いだろう。 「……ならば示して見せよ、お前達の忠義を。 期待しているぞ、我が忠実なる影よ」 「「「ハッ!」」」    目の前で跪く、信頼の置ける従者三人と二匹。  俺はそんな彼らを一瞥すると、とある目的を果たす為、一言二言指示を残し森から去っていった。  シンシアと共に。 「あれか……」  帝国と共和国の間に聳え立つアルテン連峰最大の山、リブラ山。  その境界線である山頂を通りすぎ、帝国領内に入ってすぐ、大砲が多数設置された要塞が現れた。  あの要塞こそが帝国の防衛拠点、ランドブルム要塞である。  ここに来た目的は至って単純。  俺の大切な人達を傷付けた借りを返し、二度と共和国に喧嘩を売る真似が出来ないよう、圧倒的な武力をもって帝国に恐怖を刻み込む。  たったそれだけだ。  
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