本物の悪夢

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「トリスタンよ、よくぞ奴らの重要拠点を見つけた。 褒美としてお前にはこれをやろう」  アイテムボックスから取り出した短剣を、トリスタンことシンシアに手渡してやると。 「こ……この短剣はもしかして、短剣使いなら誰もが憧れるというあの宵闇の月!? 良いのですか!? この様な品を頂いてしまって!」  これ、そんな大層な品物だったの?  昔クエストで立ちよった魔の蔓延る回廊とかいう、ベヒーモスやドラゴンゾンビのような最上級魔物しか出てこないにも関わらず、思いの外難易度が低かったダンジョンで拾ったものなんだが。 「構わん、取っておけ」 「あ、ありがとうございますぅ! 主様自ら私達に新たな名をつけてくれただけでも有り難いですのに、こんな物まで戴けるなんて……一生大事にさせて貰いますぅ!」  泣いて喜ぶほど?  そういえば昨日、正体を秘匿する為に名をつけてやった時も、みんな感動していた気がする。  こいつらの感性はよくわからん。 「では私は、セニア様……ランスロット様達の魔物の残党狩りや村の防衛の手伝いに戻りますぅ! リュクス様に女神の祝福がありますように!」 「ああ」  流石は元暗殺者。  まるで忍びのように木の枝を乗り継ぎ、あっという間に暗闇へと姿を眩ましてしまった。
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