実力を隠すのも楽じゃない

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「リュート、早めに諦めた方が良いぜ? こいつ、いつもああだからよ……」 「ああって?」 「ワガママ放題、好き放題って事ですよ。 そのせいで僕達はいつもいつも大変な目に……」  これはもしかして、とんでもない奴と知り合ってしまったのでは。  誰もまだオッケーしていないのに勝手に鬼ごっこを始めてしまったアリンを見て、俺はふとそう思った。  アリンと一時間遊んでみて、彼女がどういった人間なのか段々とわかってきた。  言ってみれば彼女は、傍若無人、唯我独尊を体現したような人物だ。  自分のしたい事はなんとしても通し、自分が勝つまで絶対に諦めず妥協しない。  そんな面倒臭い人間なのである、このアリンという少女は。 「待ちなさいよ、リュートー! いい加減捕まりなさーい!」 「でも手を抜いたら怒るんだよね!」 「当たり前でしょーが! 手加減したらぶっ飛ばすわよ!」  なら俄然捕まるわけにはいかない。  それじゃあ、絶対に来られない所に逃げ込むかな。 「よっ!」  俺は目の前の大木に向かってジャンプ。  枝を足場にして、子供どころか大人ですら絶対登ってこれない大木の登頂部に、難なく着地した。   「ああっ、ずるい! 降りてきなさいよ、リュート! 降りてこーい!」  絶対に嫌です。    ……にしても、これはなかなか悪くない景色だ。  前方には大平原。  西には森が広がっており、東には探索しきれそうにない程の山脈が連なっている。  平原の向こうに見える点。  あれはもしかして、街だろうか。  平原を越えた先に、大きな街が見える。  距離にしておよそ馬車で3日ってところか。  なんて名前の街なんだろ。  今度父さんに聞いてみよう。 「リュート! いい加減降りてこいよー!」  サイラスが呼んでる。  もう少しここでアリンの目から逃げていたい所だが、あんまり遅くなるとリーリンやポックルが代わりに被害に遭いかねん。  そろそろ降りるとするか。   「うん、今降りるからちょっと待っ……」  ドクン。 「!」  なんだ……?  半径二十キロに及ぶ俺の魔力探知に何かががひっかかった。  これは、山脈の方からか。  手前から二つ後ろぐらいの山からリル程ではないにしろ、それなりに強い魔力を感じる。
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