214人が本棚に入れています
本棚に追加
「リュート、早めに諦めた方が良いぜ? こいつ、いつもああだからよ……」
「ああって?」
「ワガママ放題、好き放題って事ですよ。 そのせいで僕達はいつもいつも大変な目に……」
これはもしかして、とんでもない奴と知り合ってしまったのでは。
誰もまだオッケーしていないのに勝手に鬼ごっこを始めてしまったアリンを見て、俺はふとそう思った。
アリンと一時間遊んでみて、彼女がどういった人間なのか段々とわかってきた。
言ってみれば彼女は、傍若無人、唯我独尊を体現したような人物だ。
自分のしたい事はなんとしても通し、自分が勝つまで絶対に諦めず妥協しない。
そんな面倒臭い人間なのである、このアリンという少女は。
「待ちなさいよ、リュートー! いい加減捕まりなさーい!」
「でも手を抜いたら怒るんだよね!」
「当たり前でしょーが! 手加減したらぶっ飛ばすわよ!」
なら俄然捕まるわけにはいかない。
それじゃあ、絶対に来られない所に逃げ込むかな。
「よっ!」
俺は目の前の大木に向かってジャンプ。
枝を足場にして、子供どころか大人ですら絶対登ってこれない大木の登頂部に、難なく着地した。
「ああっ、ずるい! 降りてきなさいよ、リュート! 降りてこーい!」
絶対に嫌です。
……にしても、これはなかなか悪くない景色だ。
前方には大平原。
西には森が広がっており、東には探索しきれそうにない程の山脈が連なっている。
平原の向こうに見える点。
あれはもしかして、街だろうか。
平原を越えた先に、大きな街が見える。
距離にしておよそ馬車で3日ってところか。
なんて名前の街なんだろ。
今度父さんに聞いてみよう。
「リュート! いい加減降りてこいよー!」
サイラスが呼んでる。
もう少しここでアリンの目から逃げていたい所だが、あんまり遅くなるとリーリンやポックルが代わりに被害に遭いかねん。
そろそろ降りるとするか。
「うん、今降りるからちょっと待っ……」
ドクン。
「!」
なんだ……?
半径二十キロに及ぶ俺の魔力探知に何かががひっかかった。
これは、山脈の方からか。
手前から二つ後ろぐらいの山からリル程ではないにしろ、それなりに強い魔力を感じる。
最初のコメントを投稿しよう!