影の盟主リュクス=ペンドラゴン

1/3
前へ
/355ページ
次へ

影の盟主リュクス=ペンドラゴン

「閣下、ご報告いたします! たった今、最終防衛ラインが破られました! もうすぐここに到達すると思われます!」 「くそ……クソクソクソクソ! なんなんだよ、あの化物は! あんなのが居るだなんて、聞いてねえぞ!」  あり得ねえ……こっちの数は5000。  対して向こうはたった一人。  なのになんでこんな事になってやがる。   「どう……されますか、レジン様」 「どうするもこうするもあるか! さっさとあいつを殺せ! 魔物も全部放て! なんとしても俺が逃げる時間を稼ぐんだよ!」 「は……ハッ! 直ちに! お前達、聞いたな! 今すぐ……」 「エクスプロージョン」  部下の一人がそう指示しようとした瞬間、突然扉が弾き飛んだ。  いや、扉だけじゃない。  建物の一部が瞬く間に消え失せている。  その瓦礫の向こうから、黒ずくめの男がこちらに歩いてきているのが見えた。  背丈はおよそ15歳前後の子供。  身体の作りからして、ガキで間違いない。  だが男が纏う空気は子供のそれじゃない。  これは、そう。  魔王と対峙しているような感覚。  それが一番近い感覚だ。 「な、何してやがる! お前ら、俺の盾になれ! 俺はその隙に…………ぐあっ! なんだよ、これ……! なんでこんな所に透明の壁が! さっきまでこんな物は……っ!」  まさか、これもあのガキの仕業か!?   「レジン様、お逃げください! 我々ではこの男を止める術は…………ぎゃああああ!」 「ひいい!」   振り向くと、人がいきなり発火し、炭になった。  今のは魔法なのか?  これが魔法……?  詠唱もなく、こんな一瞬で人を灰にする魔法なんか俺は知らない。  なんなんだ……なんなんだよ、こいつは!   「やめ……! ……ッ!」  気がつけば、残った兵士はたったの五人。  それも次の瞬間には三人に減った。  ただの蹴り二発で。 「貴様がこの砦の主か」 「だ……だったらなんだってんだ!」 「そうか……」  男はそれだけ呟くと、一歩、また一歩とゆっくりこちらに向かってくる。 「お下がりください、レジン様! ここはわたくしどもが……!」  そうだ、残りの二人は父上が寄越してくれた、帝国で一、二を争う有能な兵士。  こいつらにかかれば、こんな奴相手になる筈が……!
/355ページ

最初のコメントを投稿しよう!

197人が本棚に入れています
本棚に追加