154人が本棚に入れています
本棚に追加
/274ページ
「た……頼んだぞ、お前ら! なんとしてもそいつを……」
「失せろ、羽虫」
「…………は?」
冗談じゃない。
この二人は帝国最強の兵士だぞ。
なのに腕を振っただけで殺された?
抵抗一つ出来ず?
「あり得ねぇ……あり得ねぇ、あり得ねぇ、あり得ねぇ、あり得ねぇ! こんなバカな事があるかよ! クソがあああっ!」
躍起になった俺は国王から賜った魔剣で男に斬りかかる。
だが……。
「……これで終わりか?」
「────!」
一度触れればどんな物でも切り裂く魔剣エングラムは、たった一枚の薄い板に阻まれ、男に刃すら届かせることが出来なかった。
しかも男はただ防ぐだけじゃなく、剣を掴むと。
「ふんっ」
「魔剣を……折りやがった、だと?」
魔剣を素手で折るって、なんだよそりゃ。
オリハルコンで鍛えられた魔剣だぞ。
それを折る?
「ば……化物…………」
「化物、か。 我からしたら貴様らの方が、余程化物だと思うが……な!」
「ぶっ!」
痛ぇ……痛ぇ痛ぇ痛ぇ痛ぇ!
顔が今まで感じたことがないぐらい痛ぇ!
「た、助けてくれ……頼む……」
壁に激突し横たわる俺を、男は前髪を掴み、吊り上げる。
そして、何度も何度も殴られ続けた。
「ひっ! が……ぎっ!」
怖い、痛い、怖い、痛い、怖い、痛い。
これ以上は耐えられない。
もう死にたい、頼む、殺してくれ。
……いやだ、やっぱり死ぬのは嫌だ。
まだやりたい事が沢山あるんだ。
だから……。
「頼む……もうやめてくれ………………謝るから、謝るからもう……」
「謝って許されるのは、子供までだ。 それに貴様のした事は、謝罪一つで許される物ではない。 諦めてその身で贖え、痴れ者が」
「うあああああっ!」
それからどれだけの時間が流れただろうか。
意識が混濁し、記憶が途切れ始めた頃。
ようやく永遠に続くと思われた暴力に、終わりが訪れた。
「う……うぅ……」
「……おい」
死にかけの状態で床に転がる俺の胸ぐらを男は掴んで引き寄せると、強大な魔力を有する者のみに顕現する紫紺の瞳で俺を見下ろしながら、男はこう言ってきた。
最初のコメントを投稿しよう!