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「リル、ブラシで毛繕いしてやるよ」
「わふっ!」
同じく暇をしていたリルは、渡りに船と俺の膝に顎を乗せる。
リルは特注で作って貰った、このブラシがお気に入り。
意外と艶やかな毛並みをサッ梳いてやると、強大な魔物がすると思えない気持ち良さそうな表情を……。
「リュートくん、お休みのとこごめんね。 ちょっと窓の外見て貰っても良いかな。 あそこなんだけど……」
リーリンに言われた通り、俺は窓から顔を出して、指先の方角。
王都に続く街道沿いに目を向けた。
そこでは破壊された馬車の傍らで、金色に輝くポニーテールを揺らす女の子が、魔物と戦っている最中だった。
「なんだありゃ……大蛇か?」
緑色の皮膚に三メートルに及ぶ細長い体躯。
かなりの大物だ。
「どうする?」
「どうもこうも無いだろ、助けるんだよ。 今はなんとか抵抗はしてるけど、刃が鱗に弾かれてる。 あれじゃあ、いつか殺されるのが落ちだ」
「りょーかい。 んじゃ、みんな! しっかり掴まってなさいよ!」
手綱をしならせると、馬車がスピードアップ。
ぐんぐん大蛇へと距離を詰めていく。
「リル! リーリンに出力強化魔法をかけろ! リーリンは氷魔法を! 蛇なら氷が苦手な筈だ!」
『承知! 受けとれ、小娘!』
「これなら……! 天空より産み落とされし氷剣よ! 異層駆けし六相氷よ! 眼前の敵に氷界の裁きを下せ! ブリジットコフィン!」
おお……あんな魔法まで使えるようになったのか。
大したものだ。
「魔法!? くっ!」
魔法に気付いた少女が蛇から距離を取った直後。
上空から降ってきたおよそ二メートル程の剣が、蛇に落下。
氷剣は鱗を易々と貫き、蛇を串刺しにした。
しかし、蛇はまだ死んでいないようだ。
若干まだ動いている。
「今ので死なないとか、結構しぶといじゃん。 ねぇねぇ、アリンお姉ちゃん。 エンドラちゃん達でやっちゃう?」
「良いわね、やりましょ! って事で、リーリン! 馬、任せたわよ!」
「え!?」
いきなり手綱を渡されたリーリンがわたわたするのを余所に、エンドラとアリンは蛇へと猛ダッシュ。
そして二人は着くなり、時間差で必殺技をぶちかました。
「エンドラちゃんキーック!」
流石は一見ロリっ娘に見えても、中身は化物のエンドラさん。
大蛇を蹴り上げ、空中に舞い上がらせてしまった。
相変わらず見た目と実力のギャップがすんごい。
とはいえ、アリンも負けてはいない。
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