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「ヒートエンチャント! からの……襲爪果断・焔!」
腰に差した二本うちの一本、マテリアルソード。
付与魔法の効果を最大限発揮する半透明の剣が、炎のエンチャント魔法で紅く染まった瞬間。
飛び上がって、一刀両断。
少女が全く歯が立たなかった鱗を焼き切り、蛇を真っ二つにしてしまった。
「ふぅ……まっ、こんなもんかしらね。 よくやったわ、エンドラ。 ナイスフォローだったわよ」
「にひひ! ぶいっ!」
二人とも随分強くなったなぁ。
これが一年間、必死に特訓した成果か。
幼馴染みとして鼻が高い。
「……すみません、お陰で助かりました。 貴女がたが居なかったら、今頃どうなっていた事か……」
「気にしなくて良いわ。 騎士足るもの、見てみぬ振りは出来ないもの」
「いやお前、最初ちょっと迷ってただろ」
話に割り込んで来た俺にアリンは、何で言っちゃうのよ、とでも言いたげな視線を投げてくる。
それを見ていた少女はおずおずと。
「えっと、貴方は……?」
「おっと、ごめん。 まだ名乗ってなかったな。 俺はリュート、リュート=ヴェルエスタ。 ただの通りすがりの新入生だ」
「ヴェルエスタ……? それってもしかして、あの……」
うちの事を知っているのか、この子?
一体どうして……いやまあそりゃそうか。
知っていて当たり前かもしれない。
なにしろヴェルエスタ家と言えば、今や帝国との戦争を止めた立役者。
ここ一年、話題に上がりっぱなしの有名貴族だからな。
むしろ知らない方がおかしいまである。
「あー、色々聞きたいことがあると思うんだけど、また魔物が出るかもしれないから一先ずうちの馬車に乗っていかないか? その制服、レオール学園のものだろ? 俺も今から学園に行くところだったから、ついでに送っていくよ」
「……ありがとう、恩に着ます」
それから俺達は、往来の邪魔になる馬車を片付け、改めて王都へと出発。
道中、自己紹介したり雑談しながら、お互いの友好を深めていった。
そうして遂に俺達は、目的の場所までやってきた。
共和国が誇る、貴族、平民混合の学舎。
王立レオール学園へと。
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